新・経理実務最前線!Q&A 監査の現場から 第21回 企業買収時の暫定的な会計処理と開示に関する留意事項

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 深迫 裕

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本連載では、監査の現場で検討されている、その時々のニュース・トピックスに関する論点、複数の会計基準にまたがる論点に対して、会計処理上の問題点や開示上の留意事項を多面的に捉え、Q&Aで分かり易く解説します。第21回は、企業買収時の会計処理と開示に関する留意事項について取り上げます。

なお、本稿中の意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解でないことを予め申し上げます。

Q1

決算日近くに企業買収を行い無形資産評価に時間を要する場合の会計上の留意点を教えてください。

A1

識別可能資産及び負債への取得原価の配分は、暫定的な会計処理を行うことができます。ただし、のれんの償却期間は、暫定的な会計処理の対象に含まれず、事後的に変更することができない点に留意が必要です。

1.識別可能資産及び負債への取得原価の配分

取得とされた企業結合はパーチェス法により会計処理が行われます(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下「企業結合会計基準」という。)第17項)。パーチェス法では、受け入れた資産及び引き受けた負債のうち識別可能なもの(以下「識別可能資産及び負債」という...