書評 越智 信仁 編著『中小企業決算の透明性と信頼性』
桃山学院大学経営学部教授 小澤 義昭
本書は、中小企業会計学会の課題別研究部会「中小企業財務報告の透明性改善に向けた多面的研究」のメンバーによる共同研究の成果をまとめたものであり、円滑な中小企業金融等に役立つために、中小企業における決算開示の透明性および信頼性の向上への方策について、第3者保証の制度的可能性等にも踏み込んだ意欲的な研究報告である。
中小企業の会計に関する研究としては、武田隆二神戸大学名誉教授および河﨑照行甲南大学名誉教授の研究が有名であるが、これらは中小企業の会計制度の透明性に関する研究が中心であると理解している。本書はそれだけでなく、決算書の信頼性の確保に関連する第3者の保証業務にも研究の枠を広げている。
本書は、3部構成、全11章で組成されており、第Ⅰ部「中小企業決算を取り巻く諸制度」において、第1章では、中小企業会計とその保証をめぐる会社法上の諸問題に関連して、決算書の公開と信頼性の担保のための会計調査人(仮称)の保証の付与について検討している。第2章では、各国における中小企業への監査義務の付与状況を分析し、IAASBの取り組み状況についても検討を行っている。第3章においては、中小企業会計制度の特徴を整理...
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