Q&Aコーナー 気になる論点(389) 期中財務諸表に関する会計基準案

‐実績主義と予測主義‐

早稲田大学 大学院会計研究科 教授 秋葉 賢一

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 企業会計基準委員会(ASBJ)は、2025年4月23日に企業会計基準公開草案第83号「期中財務諸表に関する会計基準(案)」(会計基準案)及び企業会計基準適用指針公開草案第85号「期中財務諸表に関する会計基準の適用指針(案)」(適用指針案)を公表しました。会計基準案では、企業の報告の頻度(年次、半期、又は四半期)によって、年次の経営成績の測定が左右されてはならないとする原則の採用を提案しています。これは、なぜでしょうか。

この原則により、金融商品取引法に基づく第一種中間財務諸表と金融商品取引所の定める規則に基づく四半期に係る財務情報の会計処理が同一の結果となるようにするためです。ただし、その原則は、期中財務諸表の性格において、「実績主義」を基本とするという従来の考え方を引き継ぐ会計基準案の提案とは異なり、「予測主義」の考え方と整合的です。

〈解説〉

経緯等

2023年11月に金融商品取引法が改正され、以下とされました。

(1)上場企業について金融商品取引法上の第1・第3四半期報告書を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化すること

(2)開示義務が残る第2四半期報告書を半期報告書として...