監査等委員会設置会社がもたらしたもの

~進むモニタリング・モデルへの転換~

 元法政大学兼任講師 田名網 尚

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1.はじめに

2014年改正会社法において株式会社の新たな機関設計として監査等委員会設置会社が創設されてから10年が経過した(改正法の施行は2015年5月1日)。当初は、「監査等委員会設置会社がどの程度利用されるかは、予測し難い点があるものの、利用する会社があるとすれば中小の上場会社に限られるというのが、おおかたの認識であろう。」 という見方もあったが、現在(2025年4月30日現在)、東京証券取引所(以下、「東証」という。)の一般市場(プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3市場をいう。)に上場している会社3,819社の中で、監査等委員会設置会社は1,637社(比率は42.9%)に達しており、その多くが監査役会設置会社からの移行となっている。

また、市場別に見ると、わが国を代表する株式市場であるプライム市場では、監査役会設置会社の比率は50.1%と、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社を合計した比率49.9%と拮抗している。さらに、2025年3月期決算会社の株主総会が開催される本年6月下旬には20社以上が監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行を予定しており②、伝統...