<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第138回 リース(17)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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ホスト・コンピュータ

入社して2年目に、会社のコンピュータ室の中に入ったことが1度だけある。配属が主計部だったので、外出はほとんどなく、唯一の外出は、決算期にコンピュータのアウトプットデータを別棟のコンピュータ・センターに取りに行くことぐらいだった。普段は外の受付でアウトプットされたデータ帳票の束を受け取るだけなのだが、その日はデータの不具合があって、コンピュータ室の中に入って話をした。

1980年代初頭のコンピュータ室は広かった。吹き抜けになった大きなフロアに入ると、クーラーが強力に効いていてひんやりとした。フロアには大型冷蔵庫のようなコンピュータが何台も整然と並び、オープンリールの磁気テープがくるり、くるりと回っていた。鑽孔機(さんこうき)で穴を開けたデータカードを大きな音を立てながら高速で読み取らせ、洗車機のようなプリンターで帳票をプリントアウトする。コンピュータ室はまるで巨大な工場の様だった。

当時、大企業は競って自前のコンピュータ・システムの構築を急いでいた。より大型で高速・高機能のコンピュータを自前で持ち、社内で処理を完結させる。その大型コンピュータのことを汎用機、あるいはホスト...