会計基準の長い日々 第15回 商法改正と初めての基準開発(その2)

~“ロッキー”の登場

 公認会計士 西川 郁生

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自己株式等専門委員会と"ロッキー"の登場

自己株式等専門委員会は斎藤委員長も出席し、外部専門委員に神田秀樹委員が加わった。専門委員会の段階から、会計と商法の第一人者が揃う。第1回自己株式専門委員会に私自身面識がなかった会計士が、外部専門委員として登場した。監査法人トーマツの布施伸章氏である。純粋で真面目そうな青年だった。真面目なだけでなく、専門委員会に出てきた以上、意見をいわなければいけないという意欲に溢れていた。

資本準備金の取崩しの受け皿となる「その他資本剰余金」の扱いが焦点となった。その他資本剰余金からの配当が可能になるのだ。布施専門委員は「商法上、その他資本剰余金からの配当(利益処分)が可能となることで、B/S資本の部で、それが留保利益と同様に扱われることはおかしい。資本剰余金と利益剰余金を明確に区分して表示してもらいたい」と主張した。

斎藤委員長は、資本と利益の区別が会計処理では最重要とする一方で、B/S資本の部の表示に関しては別の持論があった。資本剰余金と利益剰余金の区分表示そのものに拘りがないのだ。「当期の資本増加として当期純利益という成果が示されればよい、残りの資本項目はすべ...