役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<229> 代表取締役による自らの個別報酬額増額(1)
弁護士 小林公明
Q
株主総会において取締役の報酬総額を決議し、これを受けて取締役会が代表取締役を含む各取締役の報酬額の決定を当該代表取締役に委任した場合において、その代表取締役が自己の報酬額の増額を決定したときに、取締役としての善管注意義務に違反し会社に対し損害賠償責任を負うとされた裁判例はあるのか。
A
1 結論
学説では従来から、代表取締役による自らの報酬額の決定が取締役としての善管注意義務に違反するものであれば、会社に生じた損害を賠償する責任を負うとする見解が有力であったが、最近では実際にその責任を肯定する裁判例が出てきている。
2 取締役の報酬額決定ルート
(1)取締役の報酬額決定をめぐる議論
この問題については、前に本Q&A202・203「代表取締役社長による各取締役の個別報酬額の決定はフリーハンドか」( 本誌3476 ・ 3477号 )で、それまでの裁判例(後記4〔1〕及び〔2〕、いずれも代表取締役の責任否定)を取り上げて解説したことがある。
しかし、その後当該責任を肯定する裁判例も現れ、実務上責任否定裁判例の上に安住することの危険性が認識され、殊に代表取締役自らの個別報酬額増額の決定については厳しい目が向けられ...
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