<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第140回 リース(19)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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タクシー・ドライバーの武勇伝

決算の時期になると帰宅は毎晩深夜1時2時になり、深夜タクシーを利用した。自宅まで40分間、運転手さんと2人きりになる。

寝てしまうことも多かったが、深夜まで集中して仕事をしていると目が冴えて眠る気にならないし、タクシーで寝てしまうと、自宅に帰ってから寝つきが悪くなるので、タクシーの中では眠らずに、運転手さんと話をすることが多かった。私はいつも運転手さんに「今まで最も長距離だったお客さん」について尋ねることにしている。すると運転手さんはそれぞれに面白い話をしてくれる。

聞いた話の中で一番の長距離は、東京から名古屋までというものだった。客は翌早朝にどうしても名古屋にいなければならなかったにも関わらず、新幹線の最終に乗りそびれたらしく、なんとか途中の駅からの乗車を試みたが失敗し、とうとうそのまま名古屋までタクシーで行くことになったという。

運転手さんはその日名古屋のホテルで1泊し、翌朝駐車場に行くと、自分の車の周りに人だかりができていた。地元のタクシーの運転手さん達が、車のナンバープレートが東京だったので驚いて、どんな人がどういう事情でここまで来たのか話を聞こうと、運転...