事例から学ぶ適時開示―事業環境が変化した際の積極的開示(米国の関税措置を例に)―

東京証券取引所 上場部 開示業務室 ディスクロージャー企画グループ 統括課長 渡辺 隆

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1.はじめに

金融商品取引所の規則により上場会社に義務付けられる適時開示は、投資者に対して重要な会社情報を広く、かつタイムリーに提供するための制度で、上場会社は常に投資者の視点に立った迅速、正確、かつ、公平な会社情報の開示を徹底する必要があります。上場会社を取巻く経営・事業環境は様々で、各上場会社の経営者層、開示担当者におかれては、日々上場会社及びグループ会社の置かれている環境の変化にいち早く気付き、影響を察知、分析し、対応を検討されていることと思います。また、上場会社が開示する内容は投資判断上の重要な要素となり得ますので、社内で決定を予定している対応策や社内外で発生した影響に関する情報をできるだけ早期に収集し、社内外関係者と連携しながら開示要否や開示事項の検討等に尽力し、迅速かつ丁寧に開示することが肝要です。株式会社東京証券取引所(以下、「東証」といいます。)では、このような事業環境の変化に関する積極的な開示について「会社情報適時開示ガイドブック」やこれまでも折に触れて上場会社宛の通知 でお願いしているところです。

本稿では、主に事業環境の変化に関する適時開示上のポイントや、今般の米国の...