M&Aの経理実務を時系列で理解する 第1回 連載の狙いと全体構成
株式会社Stand by C 公認会計士・税理士 角野 崇雄
1.はじめに
企業が成長を遂げる手段として、M&A(合併・買収)は今や不可欠な戦略である。国内市場が飽和し、人口減少が続く日本においては、既存の事業だけで売上や利益の拡大を実現することが難しくなりつつある。新しい製品、新しい市場、新しい販路を手に入れる手段として、M&Aは多くの経営陣にとって現実的かつ実行可能な選択肢となっている。
その一方で、M&Aというイベントが完了した「その後」の工程を担う経理目線で一気通貫で解説したものは多くない印象である。例えば、ある上場会社A社がB社を買収して100%子会社とした場合、A社は連結財務諸表にB社を取り込む必要がある。A社はB社を連結財務諸表に取り込む前に、B社の財務諸表がA社の連結財務諸表に適用されている会計基準との差異(GAAP差異)があれば調整しなければならない。これはいわゆるPMI(Post Merger Integration)の一環として行われる。GAAP差異を調整したB社の初度連結時の貸借対照表に基づいて資本連結仕訳を作成し、A社の連結財務諸表に取り込まれる。また、B社の取得に要した支出は「連結範囲の変更を伴う関連会社株式の取得支出」と...
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