<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第143回 リース(22)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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三十六計 逃げるが勝ち

三十六計は中国の兵法書で、17世紀頃に成立したと言われているので、比較的新しい兵法書である。「孫子」などの古典兵法をもとに、戦いにおける36種類の計略と策略を整理したものである。その最後に来るのが「走為上(そういじょう)」というもので、逃げるが上策、敗北必至なら潔く退却し再起を図るのが良いと記されている。これが、日本では「逃げるが勝ち」という分かり易い言葉となって広まった。

興味本位で三十六計の他のものも見てみると、面白いものがいくつかあった。たとえば、五計「趁火打劫(ちんかだつごう)」火事場泥棒、相手が混乱している時に攻め取るというものや、二十七計「仮痴不癲(かちふてん)」狂人のふりをして本心を隠す、三十四計「苦肉計(くにくけい)」敢えて自ら傷を負い、相手を欺く、などである。このうち、二十七計の、狂人のふりをして本心を隠すという手法は、madman theoryとも呼ばれ、かつてアメリカのニクソン大統領がよく使った手法であるが、現代のトランプ大統領はさらに激しくこの手法を活用している。彼は何をするか分からないと思わせて、相手から譲歩を引き出す手法である。また、三十...