役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<231> 取締役報酬の変更(減額・無報酬)

 弁護士 小林公明

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会社はいったん定められた取締役の報酬をその任期中に減額又は無報酬とすることはできるか。

1 結論

会社は原則として当該取締役の同意のない限り取締役の報酬をその任期中に減額又は無報酬とすることはできない。

2 取締役報酬の変更(減額・無報酬)

(1)変更

現在においては、一般的に「適法に決定された取締役報酬の額は、その具体的な金額が契約内容となって当事者双方を拘束し、原則として当事者の一方が相手方の同意なしに変更することができなくなることは、ほとんど異論がない。」(判解民事篇平成4年度593頁[水上敏])といわれる。

古くは最判昭31.10.5D1-Law27410347がその趣旨を次のように判示する。

 第二、前述のごとく、取締役会の決議に従い、社長が正当に一営業期間内自己の受くべき報酬額を決定した後においては、社長の同意がないかぎり、取締役会といえども、右報酬額を変更することはできないものとした原判決の判断は正当である。

上記は「取締役会といえども」と述べるが、株主総会決議によっても、その報酬額を変更することはできない(東京地方裁判所商事研究会編「類型別会社訴訟Ⅰ〔第三版〕」(判例タイムズ社)10...