金融資産の予想信用損失基準が一般事業会社に与える影響
公認会計士 前田順一郎
1.はじめに
企業会計基準委員会(ASBJ)において、金融資産の減損に関して予想信用損失モデルを取り入れるための会計基準等の公開草案(本公開草案)が10月29日に公表された ① 。銀行等金融機関の実務への大きな影響が予想されることなどを理由に、4年超にも及ぶ長期間の議論がなされてきたものである。本稿では基準改正が一般事業会社に対して与える影響について解説する ② 。
最初に本公開草案に関してご理解いただきたいことは以下の3点である。
①日本基準を国際会計基準(IFRS)と整合的なものにするために、貸倒引当金について将来の予想信用損失に基づき算定する方法に変更するものである。
②一般事業会社に対して与える影響は、銀行等金融機関に対するものほど大きくはないが、何らかの対応は必要になるものと予想される。
③強制適用時期は2031年3月期になるものと予想され、比較的長期の準備期間があることから、一般事業会社の場合には早期適用という選択肢も考えられる。
2.公開草案の概要
本基準改正の背景を理解するためには、時計の針を15年以上前に戻さなければならない。2007年から2009年にかけて、米国のサブプライムローンの問題...
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