M&Aの経理実務を時系列で理解する 第3回 経理部門から見るデューデリジェンス

―会計処理・決算対応の要点―

株式会社Stand by C 公認会計士 齋藤 哲

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今回(第3回)は、M&Aのディール過程において、経理部門が最も注意を払うべきデューデリジェンス(DD)について、買収後の経理実務を見据えた解説を行う。デューデリジェンスの目的やその報告書の内容も踏まえ、モデルケースとした非上場会社のS社で検出され得る論点を具体的に説明していきたい。

1.デューデリジェンス(DD)とは

第1回において、M&Aは①初期的検討→②ノンバインディングオファー→③デューデリジェンス→④最終契約→⑤クロージング→⑥PMI、という流れを辿ると説明したが、この①から⑤までのM&Aディール・プロセスにおいて、一般的に経理部門が主導する場面は多くない。M&Aディール・プロセスでは、買収を検討している事業部門、あるいは経営企画・事業開発といった社内のM&Aチームが、案件を取り仕切る証券会社(投資銀行)/M&Aコンサルタントなどのファイナンシャル・アドバイザー(FA)や、弁護士、公認会計士・税理士など各分野の専門家を起用しながらリードして進められることが多い。財務担当役員(CFO)であれば主体的に関与していくこともあろうが、経理実務を担う経理部門は、会計・財務面に関する関与に限定...