会計基準の長い日々 第21回 企業結合とのれんの償却・非償却問題~終わりの見えない戦い~
公認会計士 西川 郁生
FASB、持分プーリング法の廃止に動く
ここでのれんの会計処理において起きてきたことをまとめて記述しておこう。のれんの会計処理が、21世紀初頭に突然変わった。なぜそのような事態が生じたのか。答えは単純である。米国会計基準とIFRSが、取得法において発生するのれんについての「唯一の会計処理」であった規則償却を捨てたのである。
事の起こりは米国からである。企業結合に関する国際的な会計基準には、並存する2つの会計処理として、取得法と持分プーリング法があった。
当時の米国会計基準 ① では、どちらが買収者か判別できないほど対等な結合という持分プーリング法の要件を満たさない限り、取得法を用いるとされていた。会計処理に優劣があるわけではなく、状況によって使い分ける考え方である。基準の建付けとして、通常、最初に要件が限定されるものが例外的な処理(持分プーリング法)となり、「それ以外」となる方法(取得法)が一般的な処理となる。
持分プーリング法は、結合当事者のB/Sを合算するだけなので、会計処理が簡便である。持分の移動がなかったかのように捉えるためである。のれんが発生したり、それに伴うのれんの償却負担を負う必要が...
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