KDDIグループ循環取引事案の解剖

99.7%架空の広告取引はなぜ長期間続いたのか

 弁護士 遠藤 元一

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序論

2026年1月14日、KDDI株式会社は連結子会社ビッグローブ株式会社およびその子会社ジー・プラン株式会社(以下「株式会社」を省略)における「不適切な取引の疑い」を開示した。同年3月31日付け特別調査委員会の調査によって判明した実態は、累計売上過大計上2,460億円、営業利益過大計上約500億円、外部資金流出329億円、架空取引率99.7%という、日本の大手通信グループ傘下では前例のない規模の循環取引だった。

本稿の最大の関心は、この不祥事が「現場担当者2名の個人的逸脱」という説明で完結するのか否かにある。特別調査委員会はビッグローブとジー・プランの兼務従業員2名(以下、A氏・B氏)を直接の関与者と認定し、「KDDIにおける組織的な事案ではなかった」と結論づけた。しかし、この結論は事案の構造的深部に真に触れているのだろうか。報告書自身が開示した財務データは、不正の急拡大がKDDIの経営戦略転換と時系列的に鮮明に一致することを示しており、「個人責任に閉じ込める」枠組みの妥当性は根本から問い直される必要がある。

本稿は、特別調査委員会の調査報告書(2026年3月31日受領・公表、以下「報告...