金融資産の予想信用損失基準 公開草案へのコメントの分析と課題

 公認会計士  前田 順一郎

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1.寄せられたコメントの状況

企業会計基準委員会(ASBJ)は2025年10月29日、貸倒引当金の算定に関しIFRS第9号を議論の出発点として新たに「予想信用損失モデル」を導入する「金融商品に関する会計基準(案)」等の公開草案を公表し、2026年2月6日(金)までコメント募集がなされた。金融機関の業界団体、大手監査法人、日本公認会計士協会を含む団体等から20通、当方を含む個人から10通、合計30通のコメントが寄せられた。各コメントはASBJのHPで読むことができる。

本基準開発は6つのステップに分けて検討がなされ、「ステップ4」においては主として中小・地域金融機関等に配慮し「IFRS第9号を出発点として、適切な引当水準を確保した上で実務負担に配慮した会計基準を目指す」こととされた。その議論の結果として、公開草案においては、我が国独自の「簡素化された予想信用損失の算定方法」(以下「簡素化法」)の規定が盛り込まれた経緯がある。しかし、この簡素化法には多くのコメントが寄せられた。配慮の対象であったはずの中小・地域金融機関の関連団体からも慎重な意見が目立つ。

信金、労金、信組、農協、漁協の業界団体及...