<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第159回 失われた40年(11)
国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継
内助の功
「内助の功」という言葉がある。この言葉を説明する際にしばしば語られるのが、戦国武将の山内一豊とその妻千代の逸話である。一豊がまだ身分の低い武士であった頃、彼の手元には余裕のある金などなかった。少なくとも本人はそう思っていた。ところが千代は、その裏で金を蓄えていた。そして素晴らしい駿馬が現れた時、千代は蓄えていたお金を差し出し、夫にその駿馬を手に入れさせる。この馬が信長の目に留まり、一豊は評価を高める契機を得たと伝えられている。
この話の核心は、献身でも節約でもない。「ないと思っていたものが、実はあった」という点にある。しかもそれは、わずかな額ではなく、状況を一変させるだけの力を持っていた。本人にとってはゼロだと思っていた状態の中に、実は大きな価値が潜んでいたのである。重要なのは、それが外からはまったく見えていなかったということである。一豊にとって、その金は存在しないも同然だった。周囲から見ても同じである。しかし実際には、確かに存在し、しかも決定的な場面で初めて姿を現す。
逸話が教えてくれるのは「見えていない価値」の価値である。「ないはずのものが存在していた」という意外性が大事なので...
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