トランプ大統領とデジタル課税の行方 ~国際税務研究会「米国税制セミナー」3月5日開催~【国際税務研究会】

 『トランプ米大統領、OECDの国際課税ルールからの離脱を発表(米国)』と題する、JETRO(日本貿易振興機構)の「ビジネス短信」が公表されました(1月24日)。トランプ大統領の出現は、100年に一度ともいわれる国際課税ルールの改革にどのような影響があるのでしょうか。

 2025年1月20日に、トランプ大統領が出した『PRESIDENTIAL ACTIONS』の『OECDグローバル・タックス・ディール』。このOECDの国際課税ルールからの離脱を指示する大統領覚書(メモランダム)によって、今後、どのような影響が考えられるかについて整理してみました。
 いわゆるBEPS 2.0ともいわれる第1の柱、第2の柱による「デジタル経済対応課税」については、現在、次のような状況にあるようです。

●利益Aは実現不可能に?
 まず、デジタル(経済対応)課税「第1の柱」のうちの「利益A」。
 これは、アメリカが参加しないと発効しない仕組み(MLC:多数国間条約)になっているので、実現はほぼ不可能ではないかといわれています。
 一方、「利益B」については、上記のメモランダムでは触れていないので分かりにくいのですが、こちらは生き残っていく公算が高いようです。
 というのも、アメリカ財務省と内国歳入庁が2024年12月18日、「基礎的なマーケティング・販売活動に係る独立企業原則の新しい簡素化・合理化アプローチ(米国SSA)」に係る「通知」を公表しており、アメリカの納税者は、2025年1月1日以降に開始する事業年度から対象取引に米国SSAを選択適用できるとされているからです。
 これは、日本親会社のアメリカ子会社、アメリカ親会社の日本子会社の双方に関係してくるようです。日本では「利益B」の令和7年度税制改正での導入は見送られています。

●UTPR適用には報復措置!?
 「第2の柱」、いわゆるグローバル・ミニマム課税は、おもに所得合算ルール(IIR)と軽課税所得ルール(UTPR)、国内ミニマム課税(QDMTT)の3つの制度から構成されます。日本では令和5年度改正でIIR が法人税法に規定され、令和7年度改正で、UTPRとQDMTTとが法制化される予定です。
 トランプ大統領のメモランダムの文面からは、所得合算ルール(IIR)等への影響は読み取れませんが、米国共和党は以前から、軽課税所得ルール(UTPR)が適用された場合には何等かの報復を行うべきだ、との考え方を示しています。日本のIIRによる課税はアメリカ子会社の負担にはなりませんが、UTPR(日本子会社、アメリカ親会社)ではそうはいかないようです。
 令和7年度税制改正により、UTPR法制は2027年3月期から適用される予定ですが、EU諸国では先行して導入されていますので、今後の動向が注目されます。

●国税務研究会では3月5日、「米国税制セミナー」を開催します。(詳しくはこちらへ)
 月刊「国際税務」3月号では、以下の2つの解説で、上記の最新情報を掲載する予定です。
・令和7年度税制改正を踏まえたBEPS 2.0の最新動向 ~グローバル・ミニマム課税、CFC税制、第1の柱~
・デジタル経済課税/第1の柱に係る最新議論の動向 ~米国が第1の柱/利益B導入の方向へ~

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