空き家活用株式会社和田貴充さんに聞く どこから手をつける?空き家問題を解決するメソッド【マネジメント倶楽部・今月の深読み!】

このコラムは『マネジメント倶楽部』2022年2月号に掲載されました。

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総務省の「住宅・土地統計調査」(平成30年)によると、全国の空き家の数は849万戸です。この20年で約1.5倍に増えていて、総住宅数に占める割合は、過去最高の13.6%にまでなっています。現在空き家を所有している、あるいは今後、空き家の所有者となるかもしれないが、何から手をつけたらいいのかわからないという人もいるでしょう。このままでは日本は空き家大国になってしまうと、未来のために立ち上がった人がいます。

流通していない空き家が山ほどある

──2015年5月、「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)」が施行されました。この法律により、周辺に危険を及ぼす可能性のある「特定空家等」に指定されると、固定資産税と都市計画税が増額される可能性、また、空き家が強制的に取り壊され、その費用負担が発生する可能性も出てきました。

 空き家対策特別措置法ができましたが、空き家問題は、緊急性が低い課題とみなされがちなんです。放っておいても個人の生活にすぐには支障がない、どこに相談したらいいかもわからないということから後回しになりがちです。自治体がどうにかしようにも、ノウハウも予算もないので、結局クレーム対応しかないのが現状で、頭を抱えています。
 そこで、空き家の所有者と空き家を活用したい人をマッチングする自治体向けに特化した、プラットフォームがあればいいなと、長年考えていました。それがようやく形になったのが「空き家活用ナビ」というプラットフォームです。第1弾は世田谷区と契約し、2021年11月より導入していただく運びとなりました。このナビにより、世田谷区における空き家の所有者、活用の希望者及び登録事業者をマッチングします。
 現在、全国の空き家849万戸のうち、賃貸で貸したい、売りたいという流通にのせている物件は500万戸くらいと言われています。では、残りの349万戸はどうしているのかというと、ほったらかしという状況です。このうち、ほったらかし状態にある長屋・一軒家は270万戸。まずこれらを流通にのせていくことによって、空き家問題を解決していこうと思っています。

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(写真:空き家相談では、場合によっては土地の境界線の確認が必要になるときもある。)

──コロナ禍で、地方への移住は人気です。空き家も当然、人気です。それなのに、なぜまだ流通しない物件があるのですか?

 私も、空き家データを集めて、みんなでその情報を共有したら、すぐに空き家が売れて、全国の空き家問題が同時多発的に解決できると思っていたんです。でも、そんなに甘くなかったんですね。
 私たちの会社は、不動産会社や建築業ではありません。街を歩いて空き家を見つけ、時には自治体と連携しながら、空き家の所有者情報を集め、データベースサイトの「AKIDAS」を作ってきた会社です。このデータは全国16万戸を網羅しています。このデータを、有料で不動産会社が閲覧する仕組みで、これにより当社は収益を得ていました。不動産会社が、「この物件、ぼくらだったら売れるな」と思ったら、所有者にアプローチしてもらうというもので、所有者に売る気があれば、成約するという流れです。これを2018年からやっていましたが、空き物件を紹介していても、実際には空き家が活用まで至らない物件が多いと気がつきました。
 なぜ、流通しない・活用できない物件があるかというと理由は2つあります。1つは、不動産会社が、私たちの空き家情報を基にして、所有者さんにダイレクトメッセージを送って「売りませんか?貸しませんか?」とアプローチする、いわゆる「掘り起こし」の営業が思ったよりうまくいかなかったことです。実は、私は不動産業界での経験があったので、所有者の掘り起こしは不動産会社の仕事だと高を括っていたのですが、不動産会社からは「連絡をしても所有者からの反応が薄い」という声や、「空き家を売ると決めた所有者の情報であれば欲しい」という要望が出てきました。2つめの理由は、所有者の「決められない」問題です。空き家の所有者が、売るとか、貸す、民泊にする、リフォームして住む、駐車場にするなど意思決定したら、不動産会社は動いてくれますが、その意思決定には時間がかかるので付き合ってくれません。

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(写真:現地に出向いて空き家を視察する様子。)

空き家発見から、活用までをやりきる

──売る・貸す、壊すなど意思決定できない理由は何ですか?

 多くは、①所有者さんが放置していることに何の課題も感じていない、②現状に課題を感じているが、何から始めたらいいかわからない、お金も心配、というパターンがあります。空き家を活用しようにも、まず所有者さんに対するコンサルティングが必要です。これは時間がかかり、なかなか利益が上がらない仕事で、不動産会社にはできない部分です。
 まず、①のような方には、空き家を放置するとどんな問題があるのかを伝えます。②のような危機感がある方には、例えば、空き家が不要な荷物で溢れている、所有者が複数名いて意思決定ができない、リフォームして賃貸にしたらいくら儲かるか気にしている、などの問題があります。ここに寄り添って意思決定までもっていくのが、私たちの役割です。
 ここで大事なのは、寄り添うと言っている私たちは、「中立」の立場であることがポイントになります。そこで、空き家アドバイザーを作りました。このアドバイザーが相談を受けて、信頼できる事業者さんにつないでいきます。アドバイザーとの話の中で、片付けが必要と判断したら、私たちが整理する業者を紹介します。所有者問題や税金問題であれば、弁護士・税理士などを紹介します。その次は、貸しますか、売りますか、自分で使いますか、と進めています。貸すならば賃貸業者へ、売るなら不動産業者へというように紹介していきます。私たちは、業者を紹介し、実際に発注・契約となれば、その業者からお金を頂き、所有者さんからは頂かないで収入を得ていく仕組みにしています。あくまで「隣人」として、一緒に問題を考えるという立場でいます。また、海外や遠方に住んでいて自分では空き家を見に行けないからと、空き家の現地調査の依頼をされたりもします。
 どのプレイヤーとも競合していないので、私たちが掘り起こせば掘り起こすほど、他の人たちのビジネスにつながっていきますから、地域経済活性化につながります。自治体と連携協定を結び空き家対策をともに検討するということも始めています。現在、世田谷区をはじめ、宮崎県の延岡市、埼玉県の寄居町、大阪府の岬町、茨城県の常総市という5つの自治体と連携しており、さらにこれらの自治体との連携を深めようと思っています。

根底にあるのは未来に恩送りしたい気持ち

──なぜ空き家問題に取り組もうと思ったのですか?

 20歳の時父を亡くしました。その後、父の事業を継いだのですが借金が膨らんでしまいました。なぜそんな僕に今があるかというと、結局、父が徳を積んでくれていたから、「お父さんにお世話になったから」と応援してくれる人がいたからなんです。
 だから、私も徳を積むような生き方をしたいと思っています。自分のことだけを考えていいのなら、自分が得するだけの独りよがりの事業を続けていたと思っています。自分が好きなものを建て、気に入ってくれた人へ提供して喜んでもらえたら嬉しいですから。でも、長崎県の端島(通称:軍艦島)を訪れて考え方が変わりました。そこは、日本で初めて鉄筋コンクリートの住宅が造られた最先端の街でしたが、閉山を機に無人島になり廃墟となりました。日本では、人口が減っているにもかかわらず、新たな建物建設に歯止めはかかりません。未来に廃墟の街を残すことになります。未来の子どもたちに、より良い社会を残していきたい、空き家問題を見て見ぬ振りをして未来に先送りしてはいけない、未来に恩送りしたいと思っています。
 2033年には空き家が2,000万戸になり、3軒に1軒が空き家となるとされています。このままでは、地域の力はなくなっていきます。しかし、人口が少ない町であっても、豊かになる方法を考えていきたいんです。コロナ禍で、環境や文化に価値を感じて、街が豊かになっていく可能性があると感じました。空き家を、地域の子どもや老人の居場所にしたり、集会場、イベントスペースにしたりと、利用価値を一緒に考えて高めてくださる人が増えていくと嬉しいです。

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(写真:片付けや整理の必要があるか、そのまま活用できるかどうかなど、空き家の状況を確認して持ち主と相談していく。)

和田貴充(わだ たかみつ)
1976年生まれ。20歳で父の事業を継承し、24歳で廃業。その後、不動産業界に飛び込み、2010年に独立。『日本の空き家問題を解決したい』を背景に、2014年に空き家活用株式会社を設立。代表取締役社長となる。自分たちで調査員を派遣し空き家の実態調査を開始。2018年に空き家活用データシステム「AKIDAS(アキダス)」をリリース。受賞歴(一部):2017年9月/平成29年度「国土交通省地域の空き家・空き地等の利活用等に関するモデル事業者」に選定。2018年11月/SDGsビジネスコンテストにて「優秀賞」を受賞。2019年2月/日本最大級のピッチイベント「未来2019」で、シェアリングサービス賞およびグッドパフォーマンス賞を受賞。空き家活用株式会社 設立:2014年8月 本社所在地:東京都港区北青山三丁目3番13号 共和五番館2F

(文/平井明日菜 写真提供/空き家活用株式会社提供)


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