今月のマネジメント倶楽部

『マネジメント倶楽部』掲載コラムを毎月1つご紹介します。

Hikobayu(ひこばゆ)代表 澤田佳代子さん 澤田健人さんに聞く 世界的リゾート・ニセコ町で、6次産業化によってエシカルなものづくりを目指す【マネジメント倶楽部・今月の深読み!】

このコラムは『マネジメント倶楽部』2022年4月号に掲載されました。

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パウダースノーを目指して世界中からスキーヤー・スノーボーダーがやってくる国際リゾートの北海道・ニセコエリア。あまり知られていませんが、実は、観光だけでなく農業も主要産業の1つで、ニセコ町には豊かな自然や、羊蹄山などの美しい景観があります。国から「環境モデル都市」「SDGs未来都市」などに選定されたニセコ町で、自然環境を大切にしながら、「観光」と「環境」の架け橋となる よう、「エシカル」製品の製造・販売を行う合同会社 Hikobayu(ひこばゆ)代表の澤田佳代子さん、澤田健人さん にお話を聞きました。

──御社の取り組みを教えてください。

佳代子さん:当社は、ニセコエリアで小規模・低投資型の林業をしながら、トドマツの枝葉から抽出した天然成分100%の香り豊かなエッセンシャルオイルを製造したり、ニセコ町の「町の木」として認定された白樺の樹皮をクラフトアートにしたりしています。その他、地元の子どもたちが木と触れ合う機会を作ったり、森林のしくみなどを教えたりする「木育(もくいく)」活動などの取り組みも評価され、昨年、「農山漁村女性活躍表彰 林野庁長官賞」を受賞しました。

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(写真:林野庁長官賞の賞状を掲げる代表の澤田佳代子さん)

 商品は、ニセコエリアのホテル(ヒルトンニセコビレッジ、ウェスティンなど)、セレクトショップ、道の駅ニセコビュープラザなどで取り扱ってもらっています。特にパークハイアットニセコHANAZONOは、初代の支配人から「取り扱いたい」という直接の電話があり、ホテルオープン時から置いてもらっています。小さくて高級なエッセンシャルオイルはお土産に最適で、それも原料がニセコ産であることから、外国人の観光客の方に好評です。

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(写真:パークハイアット ニセコHANAZONOのショップ)

 社名であるHikobayu(ひこばゆ)の由来は、切り株や根元から生えてくる若芽である「ひこばえ」です。切り株にこのひこばえを見ると、「ああ、切っても根は生きているんだ」と、ワクワクした嬉しい気持ちになると同時に、枝葉まで余すことなく使い切りたいと思うようになりました。一見すると価値がないとされるものに少し手を加えることによって、新たな製品として生まれ変わらせることを使命と考えて、社名に使いました。

──ニセコ町と隣の倶知安町は、ウィンターシーズンになるとリゾートエリアで働く外国人が増え、外国籍住民登録者数が夏場の2~3倍になると言われています。新型コロナウイルスの感染拡大により、ニセコエリアは変わりましたか?

健人さん:正確な数字はわかりませんが、とにかく冬になると外国人がわんさか来て、コロナ以前は、ゲレンデは大混雑でした。それがコロナ禍で、外国人観光客がぱたりと来なくなり、ホテルもガラガラ。それに伴い、ホテルショップでの当社の商品の売れ行きは激減しました。だた、ネットでの売れ行きは思ったより好調で、あまり売り込みをしていないのに、自然と売れている状態が続いていて、驚いています。
 マーケティングが成功していたのでしょうが、もともとのターゲットは、すでにエッセンシャルオイルを日常で嗜んでいる外国人でした。さらにスキーやスノーボードのためにニセコ町に来る外国人は、環境問題への関心も高いんです。そのため、「エシカル(倫理的)消費」の価値の提供も意識しています。エッセンシャルオイルは、環境に配慮した製法であり、かつ、売り上げの一部は、持続可能な林業づくり推進に役立てていると説明しておくと、「持続可能な生産」が想像しやすいようです。加えて女性が代表なので「ジェンダーにも配慮している商品」とも言えます。
 日本でニーズを作り出すのではなく、すでにニーズがあるところに売り込むという戦略でしたが、最近は日本でも手応えを感じています。2021年3月にはファッション誌のVOGUE JAPANで当社の「トドマツ スプレー パウダー ウェーブ 100ml」が紹介されたのは嬉しかったですね。当社のトドマツエッセンシャルオイルは、国立大学の協⼒のもと、独自開発した蒸留機を通して製造しています。さらに大学の研究の結果では、最高の状態でニセコの森の香りの成分を抽出できているという数値が出て、血圧の異常値を元に戻したり、ストレス軽減、極めて強い空気清浄効果なども認められました。

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(写真:ニセコのトドマツ)

 エッセンシャルオイルには様々な効用があるので、ヨーロッパなどのように、日本でもディフューザーで香りを楽しむだけでなく、湯船に垂らしたり、化粧水、乳液、洗剤に加えたり、家庭料理に使ったりという、多様な使い方が広がると理想的です。
 インバウンドが落ち込み、苦労しているところが多いのは事実でしょうが、地元周辺では、「こんなに空いたゲレンデでスキーを楽しめるのは、もう今年で最後だね」という前向きな言葉が交わされています。コロナ禍であってもニセコエリアでは、香港系のいわゆる華僑系投資は続いていますし、リゾート開発はストップしていません。アフターコロナを見据えると、近い将来、ヨーロッパ、北米、カナダ、中国などの観光客が必ず戻ってくるでしょう。今はそのときに向けて、「持続可能な開発」や「国際環境都市」を目指すニセコ町にある会社として、当社のあり方をブラッシュアップしようと思います。

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(写真:国立大学の協力のもと、独自開発した蒸留機)

──お二人の前職は、佳代子さんは看護師、健人さんは美容師。もともと林業への憧れがあったのですか?

佳代子さん:いいえ、林業の世界に足を踏み入れるとは夢にも思わなかったですね。私は茨城県出身で、看護学校卒業後、都内の大学病院に就職しました。生と死が隣り合わせの職場で、毎日が緊張の連続でした。たとえ一命を取り止めても、障害が残って打ちひしがれる患者さんを数多く見るうち、精神的に参ってしまいました。その後、僻地医療の現場を体験してみようと、伊豆大島で「応援ナース」として働きました。そこで、初めて自然を満喫するとともに、心が癒されていくのを感じました。次に向かったのは自然豊かなニセコ町でした。そこで出会ったのが健人さんで、2人一緒にニセコ町が募集している「地域おこし協⼒隊※」に応募することになりました。

※ 地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。

健人さん:でも、僕の方が落選してしまって......落胆していたら、後になって役場から「合格者のキャンセルがでたから、キミどうか」というラッキーな電話がありました。その間少し考える時間があったので、自由な発想で、林業とものづくりが結びついたのかなと思います。特にヒントになったのは、カナダのバンクーバーに住んでいた経験です。
 僕は2008年からカナダのバンクーバーに移り、美容師として働いていました。バンクーバーは居心地がよく、永住したいとまで考えていましたが、東日本大震災が起こり、当時、両親が福島県郡山市に住んでいたこともあって、このままカナダに住んでいたら両親に何かあっても助けられないと強く思うようになり、震災の翌年、帰国しました。バンクーバーは、世界有数の国際都市でありながら、自然が豊か。車をちょっと走らせれば、もうそこはゲレンデという環境で、ニセコと共通するところがあります。そしてバンクーバーには、地元の素材で作ったオイルやアロマキャンドルを作る会社があったのを思い出し、ニセコでもできるかもしれないと、2人で挑戦することにしました。

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(写真:ニセコの風景)

佳代子さん:移住してから、ニセコの山林資源があまり活用されていない背景を知り、何かできないかと思っていたときでした。

健人さん:その後は森林づくりそのものにも興味が深まり、2017年に地域おこし協⼒隊を卒業すると、会社を起業し、ものづくりに加えて、本格的に森林整備も始めました。小規模・低投資で始められる自伐型林業です。小型パワーショベルで小さな道を作り、木の間伐、木の搬出を行います。山に道をつけると、永続的な森林管理と材の活用が可能となり、「二酸化炭素の森林吸収率」を向上させることができる環境アクションともなります。一見すると、プロダクト制作をするブランドが第一次産業である林業から始めようとするなんて、回り道のように思うかもしれません。しかし、ニセコの森林を守って、その代わりに森からお裾分けをもらうという「ギブ・アンド・テイク」の森との関係が、これからの時代には大事になってくるのかなと思っています。林業現場に立って、手足を動かすからこそ見えてくるものがあります。そういう自然からのメッセージやインスピレーションを大切にしながら、想像性のあるものづくりをしています。

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(写真:健人さんの林業作業の様子)

合同会社Hikobayu(Hikobayu LLC)
代表:澤田佳代子 役員:澤田健人
〒038-1531 北海道虻田郡ニセコ町元町62-3
主な事業内容:精油・関連商品の製造販売、森林施業、林産物販売、白樺細工の製造販売HP:https://www.hikobayu.com

(文/平井明日菜 写真/ Hikobayu提供)


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