今月のマネジメント倶楽部

『マネジメント倶楽部』掲載コラムを毎月1つご紹介します。

BLEND代表 杉山大輔さんに聞く 海まで徒歩3分のコワーキングスペースが地域に与える影響とは【マネジメント倶楽部・今月の深読み!】

このコラムは『マネジメント倶楽部』2020年11月号に掲載されました。

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コロナ禍で急速に変化した働き方。混雑する公共交通機関を使う長時間の通勤は感染リスクが高まる恐れがあると、多くの企業でテレワーク(在宅勤務や自宅付近でのコワーキングスペースの利用など)が広がりました。フレキシブルな働き方が叶うようになった反面、新たな課題も生まれています。
今回は、地元の建設会社に勤務しつつ、神奈川県小田原市でコワーキングスペース、イベントスペース、民泊を運営する「BLEND」の杉山大輔さんとその利用者にお話を聞きました。


――小田原駅は、東京駅から新幹線で35分、新宿駅からはロマンスカ-で75分の距離にあります。コワーキングスペースの利用者の中には、都内通勤の大手企業の社員もいるのでは?

杉山:本社が都内という方、地元のIT企業の社員、農家、教員、フリーランス、アーティストなど、エリアも業種も幅広い方が利用しています。
コワーキングスペースのメリットは、別々の企業の人が同じ場所で働くことが可能になる点です。会社、部署、業種も異なる人と触れ合うと、仕事上で思いも寄らない相乗効果が出てきます。「交流がいいものを生み出す」という意味を込め、「BLEND」という名前をつけました。

――利用者の一人、石塚勝巳さんにお話を聞きましょう。石塚さんは2007年に新卒でヤフー株式会社にプログラマーとして入社し、2017年から人事部に勤務されているのですね。

石塚:はい、今年の3月から「BLEND」を使うようになり、平日は、ほぼ毎日ここで仕事しています。13時くらいから仕事を開始して21時頃終了する日もあれば、8時頃開始して12時頃終了する日もあり、その日の予定やコンディションに合わせて決めています。
以前から会社は、10時から15時までのコアタイムありのフレックスタイム制で、月に5回どこでも働くことが認められていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大以降は、コアタイムも回数制限も撤廃されました。勤務時間やプロセスではなく、成果で評価されるようになっているからこそ可能になっているものだと思います。
都内まで通勤をしていたこれまでの生活では、平日に子どもの顔を見ることができませんでしたが、いまでは遊ぶことも一緒にご飯を食べることもできます。また、地元の消防団として活動しているので、出動になってもすぐに駆けつけられる安心感もあります。
「BLEND」を利用する人たちとは、一緒に海でSUP(スタンドアップパドルボード)を楽しんだり、仕事のアイデアを考えたり、気軽にプログラムの相談を受けたりしています。このような関係は、東京で働いていた頃はなかなか生まれませんでした。そんな「BLEND」だからこそ、とても楽しく仕事ができているように思います。 満員電車に乗って、深夜に帰宅するような心身ともに負荷がかかる環境に戻るのは、今では考えられませんね。

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建築現場で出た廃材を内装に再利用したコワーキングスペース

――続いて5月から利用する皆藤朗さん。小田原市出身で、都内の外資系IT会社で営業の仕事をしています。

皆藤:もとから会社はフレックスタイムを導入し、どこで働いてもいいというゆるやかな就業規約でしたが、コロナ禍で制限がなくなりました。3月から出社禁止になり、最初は自宅とカフェで仕事をしていましたが、やはり気を遣うので「BLEND」は気楽です。
自宅から自転車を10分走らせて毎朝8時にここに着いて、仕事開始。頭がスッキリして生産性も仕事のクオリティも上がりました。今までは深夜2時まで起きていましたが、今は12時には寝て、朝5時に起きるので健康にも良いです。コワーキングスペースは増えてきていますが、地元で暮らしている人が多い「BLEND」は安心して利用できます。
所属部署は営業ですが、今は客先への訪問は禁止です。その代わり、顧客に会わなくても業績を落とさない取り組みを考えることが会社からのミッションです。オンラインで業績を上げるため、話し方やプレゼンの様式も変え、会議のやり方も変えました。オンラインでお客さまと会話するときに、カメラでこの職場を見せると、山も見えるし「素敵なところですね」と受けがいいです。

――ただ、コワーキングスペースの利用やテレワークは従業員の健康に良い影響を与えるという声もある一方、中小企業にとっては設備費、労働時間管理の負担が大きいのも事実です。

杉山:働き方をどう改革していくか。前出のヤフー株式会社のような管理方法もあれば、勤怠管理をきちんとして長時間労働させない、子育て世代には時間短縮で働かせるなど、それぞれ会社の考え方があります。でも、「BLEND」を活用する方は、決められた枠で働いている人ばかりではありません。仕事とプライベートを明確に区別するよりも、労務・労働環境を自身で整えている、セルフケアができている人が多いです。仕事中に釣りなどの趣味のことをして頭の転換をしてみたり、子どもの世話や親の介護を両立させる働き方をしている方もいます。海まで歩いて3分で、山も近いコワーキングスペースなので、アウトドアスポーツを仕事の合間にできるようにと、ここを借りている人には、自転車、SUP、釣り道具などを無料で貸し出しています。仕事の合間に「遊び」に出かけられるような働き方が、私のような地方の建設会社に勤務する一社員でも会社との信頼関係があれば実現できているように、少しずつ世の中の価値観が変化してきているように感じます。このような働き方が社員の健康と仕事に良い影響を与えると考える会社が増えるといいですね。

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コワーキングスペースから海まで徒歩3分。
潮の匂いを感じながら浜で仕事するのもよし。

――コワーキングスペースの立地は小田原市といっても市街地から離れた国府津という地域です。ここで始めようとしたきっかけは?

杉山:私がもっと海の近くに居を構えたいと、数年前に小田原駅から2駅離れた国府津に土地を購入したことがきっかけです。住み始めると、この地域の空き家が目につくようになって、「もったいない」と思い、大家さんも「どうにかしたい」と考えているのがわかりました。そこでひらめいたのが、人と人をつなげる場所作りでした。なぜその考えに至ったかというと、15年ほど前に仲間と立ち上げた「小田原足柄異業種交流勉強会」という会での体験があります。小田原市と南足柄市周辺という隣り合う地域のプロたちが集まると、悩みや困りごともその仲間内で解決できました。こういう実体験から、人が交わるきっかけ作りをしたいと思うようになりました。
今、私が借りている物件は4軒です。1軒は国道1号線沿いの3階建ての建物で、1階は、横浜・茅ヶ崎・大磯でデンマーク式「森のようちえん」を導入しているNPO法人もあなキッズ自然楽校運営の「おだわら・もあな保育園」に入ってもらいました。そして、2階は月額の会員制コワーキングスペース、3階は1日1万円で使用できるレンタルスタジオ。音楽ライブ、カフェ営業、料理教室などのほか、仲間とパーティーする場としても使えます。

――地域の困りごとが「ニーズ」になり、仕事につながるのですね。

杉山:そのとおりです。2軒目に借りた物件は、1軒目から歩いて3分ほどのところにある約50坪の木造倉庫を利用したイベントスペース「PARK」です。海が目の前という好立地なのですが、昨年の台風19号のときに水をかぶってしまい、大家さんは「もう誰も倉庫として借りてくれない。駐車場にでもしようか」と嘆いていらした。それではせっかくの風景が寂しくなると感じ、そのまま借りることにしました。
とはいえ、大抵の方はイベントスペースをどう使っていいかわからないでしょうから、今年の4月にオープンしてからは「見本」として、私が毎週末にイベントを開催しています。雑貨屋、マッサージ師を呼ぶほか、国府津は買い物に不自由な方が多くいたので、パンやコーヒーの販売、キッチンカーなどが来るようにして、食べ物を入手できるようにしました。コロナ禍の下ではありますが、イベントは中止せずに縮小しつつ、野菜やパンの無人販売店を企画して人が「密」にならない方法を考えて開催しています。毎週土曜の11時になると、地元のおばあさんたちが集まっているんです。「PARK」は、生産者や販売者にとっては共同の経済活動の場であり、地域の方にとっては交流の場になっています。
すると、今度は海に面した小さい家が空いたと相談があり、「SEA CABIN」という民泊施設に改装しました。その名の通り、キッチン・トイレ・シャワー・最低限のアメニティを揃えた、シンプルな「小さな家」ですが、海を眺めることができ、コロナ禍でも7~9月までおよそ9割が予約で埋まりました。一棟貸しなので安心できるという声がお客さまから多く寄せられてます。さらに、この地域で45年の歴史がある「国府津駅前郵便局」が移転することになり、その跡地を借りて「POST」として地域の交流スペースにすることが決まりました。引き続き、国府津という場所に人が集まる拠点作りをしたいと思っています。

――コワーキングスペースから始まった「BLEND」は、人と人をつなげることで、コミュニティを活性化させる起爆剤になっています。アフターコロナを見据えると、地方コミュニティで人々がつながり合うことをきっかけに新たなニーズが生まれ、地域ビジネスが活性化していく可能性を感じます。

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イベントスペースの「PARK」。
ここで無人販売店などのイベントを開催している。


(文/平井明日菜 写真/上垣喜寛、杉山大輔)


BLEND:神奈川県小田原市国府津2−4−4 電話 090−5774−7313
http://seisho-blend.com/


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