お金と権力【マネジメント倶楽部・今月の〇〇な本!】

このコラムは『マネジメント倶楽部』2019年9月号に掲載されました。

ああ、もっとお金があれば、もっと権力があれば......どうなるというのでしょうか。「金と権力」といえば、男の野心の代名詞、成功の象徴として、誰もがすべからく追い求めるべきもののように扱われた時代がありました。しかし、それらは今を生きる私たちの「幸福」にとって、どのような意味があるのでしょうか。

恋愛と贅沢と資本主義 ヴェルナ-・ゾンバルト 著 金森誠也 訳
講談社学術文庫/1,180円+税/2000年8月刊
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経済学の大家マックス・ウェーバーは、信仰と禁欲精神による蓄財が資本主義を駆動させたと説きました。しかし、ゾンバルトは恋愛と贅沢こそが原動力だとい います。18世紀フランスでは「愛の生活が変態性にまで繊細化し、生活の全てが愛のためにだけ存在する」というほど、爛熟した恋愛が宮廷社会を動かしました。やがて恋愛は経済と都市の成長とともに世俗化。つまり、資本家と高級娼婦の恋愛が流行ったのです。同時に、都市における贅沢消費の中心がインテリア、スイー ツ、ファッションに遷移していき、経済を回し始めます。そう、モテるために金を使いまくる。男が金と権力で女を支配したのか、女が巧みに男を操ったのか。資本主義の裏に愛とセックスの悲しみと可笑しみを感じる名著です。 

日本史に学ぶマネーの論理 飯田泰之 著
PHP研究所/1,600円+税/2019年5月刊

nihonshi.pngそもそも、お金が価値や力を持っているのはなぜなのでしょう。従来、国家が中央集権的にその発行量や価値を管理してきた貨幣。現代では、フェイスブック社が発行する予定の「リブラ」や特定の発行主体を持たない「ビットコイン」など、自律分散的に価値と正当性を生み出す電子・暗号通貨が生まれ、近未来には「信用スコア」といったデータに置き換わるかもしれません。大きく揺らぎ始めたマネーについて考える糸口を、本書は日本の古代から近世の貨幣制度史に見つけます。貨幣の本質は「政府負債」と明確に定義し、長い歴史的射程で様々な貨幣の試行を例に挙げつつ、国家によるコントロールの内と外を整理することで、お金を巡る世界情勢を考える視座を私たちに示してくれる好著です。

お金があれば幸せになれるのか フレデリック・ルノワール 著 田島葉子 訳
柏書房/2,200円+税/2018年10月刊

lenoir.pngお金や権力がいくらあったとしても、幸福に生きられるとは限らない。そんなことは、言うまでもないことかもしれません。では、幸せに生きるためにはどうすればいいのでしょう。その問いに答えを求め続けてきたのが、哲学です。著者は哲学者であり、社会学、宗教学を修めた文人。ブッダ、アリストテレス、荘子、スピノザ、ショーペンハウアーなど、古今東西の哲学を縦軸に置きつつ、社会学的視点で同時代の横軸を見渡し、宗教学者として個々の生を送る私たちの心に寄り添います。経済やテクノロジーといった不可避の現実を踏まえつつ、哲学とは「生きる喜びの妨げになるものを、一つずつ取り去っていくこと」と、現実を乗り越える具体的思考を後押ししてくれる優しい哲学エッセイ集です。

選書:久禮亮太


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