個人事業税の課税標準である所得は、法令に特別の定めがある場合を除く外、前年分の所得税の事業所得及び不動産所得の計算の例によって算定する(法72の49の12①)。
なお、個人事業税の所得の算定について、地方税法で特別の定めをしているものは、次のとおりである。
- (1) 青色申告者の「青色申告特別控除」制度は、事業の所得の計算については適用されない。
- (2) 事業の所得を計算する場合に青色申告者の前年3年間の所得の計算上発生した純損失の金額(被災事業用資産について生じた損失は、白色申告にも適用)は事業税の申告書にその旨の申告をすることを要件として、所得の計算上控除される(法72の49の12⑥~⑧)。
なお、所得税において純損失の繰戻しによる還付が行われている場合には、その繰戻しがなかったものとして、純損失の繰越控除が行われる。 - (3) 事業の所得を計算する場合に、直接事業の用に供する資産を譲渡したために生じた損失の金額は申告を条件にその個人事業の所得の計算上控除される(法72の49の12⑨)。
- (4) 事業専従者控除は、青色申告者については所得税で青色専従者給与として認められた金額(所得税の納税義務を負わないもの又は所得税で専従者を控除対象配偶者、扶養親族とした者でも、給与の支給があれば、事業税の申告書に記載した額で相当と認められる金額)、白色申告者については、専従者1人につき50万円(配偶者の場合は86万円)と事業所得の金額を専従者の数に1を加えた数で除した額とのうち、いずれか低い金額が、所得計算上控除される(法72の49の12②③)。
- (5) 地方税法の施行地に主たる事務所、事業所を有する個人で、地方税法の施行地外にその事業が行われる場所(支店、出張所、鉱山、採石場等)を有するものの事業税の所得金額は、その個人の事業の所得金額の総額から法律の施行地外の事業に帰属する所得金額を控除した額とする。この場合、法の施行地外の事業に帰属する所得金額の計算が困難な場合は、所得金額の総額を従業者数であん分して計算する。また、地方税法の施行地に主たる事務所等を有する個人が外国の法令により所得税に相当する税を課された場合の所得の計算については、その外国の所得税に相当する税額のうち、外国において行う事業に帰属する所得以外の所得に対して課されたものは、必要経費に算入される(法72の49の13、令35の3の9、35の3の10)。
- (6) 医業、歯科医業等を行う個人の社会保険診療報酬の収入金額は総収入金額に算入されず、また、その経費も必要経費に算入されない(法72の49の12①)。
- (7) 所得税の計算の例によるのは、所得の計算だけであるから、各種の所得控除などは事業税では認められない。税額控除も同じ(法72の49の12①)。
不動産所得を生ずべき事業と事業所得を生ずべき事業とを併せて行っているときは、その所得又は損失はそれぞれ合算し又は通算して算定される(法72の49の12⑤)。
被災事業用資産について生じた損失とは、棚卸資産、事業用固定資産等の災害による損失で、保険金等により補填された額を控除したものである(法72の49の12⑧)。
事業用資産の譲渡損失は青色申告者に限り、3年間の繰越控除が認められている(法72の49の12⑩)。
白色申告者の事業専従者控除は個人事業税の申告をしている場合に限って認められる(法72の49の12④)。