納税者の人的事情等を考慮し、総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額から次のような所得控除が行われる(法34、314の2)。
なお、次に掲げる所得控除の対象とされる災害等による損失、支払った医療費、社会保険料、生命保険料等の範囲は、前年分の所得税の場合と同様とされており、また、障害者、寡婦等の範囲ないし要件も同様とされている。個人住民税は前年所得に対して課税されることに伴い、前年分の所得税の例によることとなる。
- (1) 雑損控除
- ① 損失の金額のうちに、災害関連支出金額がない場合又は5万円以下の場合
損失の金額-合計所得金額×(1/10)=雑損控除額 - ② 損失の金額のうち、5万円を超える災害関連支出金額がある場合
損失の金額-次のうちいずれか低い金額=雑損控除額 - ○イ 損失の金額-災害関連支出金額のうち5万円を超える部分の金額
- ○ロ 合計所得金額×(1/10)
- ③ 損失の金額のすべてが災害関連支出金額である場合
損失の金額-次のうちいずれか低い金額=雑損控除額
- (2) 医療費控除
〔支払った医療費〕-〔{総所得金額 退職所得金額 山林所得金額}の合計額×(5/100)
又は10万円のいずれか低い金額〕=医療費控除額(最高200万円)
なお、平成30年度分から令和4年度分の個人住民税について、次の算式により計算した金額が控除される(法附則4の4)。
〔支払ったスイッチOTC購入対価の額〕-〔1万2千円〕=スイッチOTC薬控除の額(最高8万8千円) - (3) 社会保険料控除
支払った社会保険料の金額が控除される。 - (4) 小規模企業共済等掛金控除
支払った小規模企業共済掛金、企業型年金加入者掛金、個人型年金加入者掛金及び心身障害者扶養共済制度の掛金等の金額が控除される。 - (5) 生命保険料控除
支払った生命保険料があるときは、次の算式により計算した金額が控除される(各保険料控除の合計適用限度額は70,000円)。 - ○A 平成24年1月1日以後に締結した保険契約等(新契約)(各控除の適用限度額は28,000円)
- ① 一般の生命保険料
- ○イ 保険料が12,000円までの場合…その全額
- ○ロ 保険料が12,000円を超えて、32,000円までの場合…12,000円+(保険料-12,000円)×(1/2)
- ○ハ 保険料が32,000円を超えて、56,000円までの場合…22,000円+(保険料-32,000円)×(1/4)
- ○ニ 保険料が56,000円を超える場合…28,000円
- ② 介護医療保険料
- ○イ 保険料が12,000円までの場合…その全額
- ○ロ 保険料が12,000円を超えて、32,000円までの場合…12,000円+(保険料-12,000円)×(1/2)
- ○ハ 保険料が32,000円を超えて、56,000円までの場合…22,000円+(保険料-32,000円)×(1/4)
- ○ニ 保険料が56,000円を超える場合…28,000円
- ③ 個人年金保険料
- ○イ 保険料が12,000円までの場合…その全額
- ○ロ 保険料が12,000円を超えて、32,000円までの場合…12,000円+(保険料-12,000円)×(1/2)
- ○ハ 保険料が32,000円を超えて、56,000円までの場合…22,000円+(保険料-32,000円)×(1/4)
- ○ニ 保険料が56,000円を超える場合28,000円
- ○B 平成23年12月31日以前に締結した保険契約等(旧契約)(各控除の適用限度額は35,000円)
- ① 一般の生命保険料
- ○イ 保険料が15,000円までの場合…その全額
- ○ロ 保険料が15,000円を超えて、40,000円までの場合…15,000円+(保険料-15,000円)×(1/2)
- ○ハ 保険料が40,000円を超えて、70,000円までの場合…27,500円+(保険料-40,000円)×(1/4)
- ○ニ 保険料が70,000円を超える場合…35,000円
- ② 個人年金保険料
- ○イ 保険料が15,000円までの場合…その全額
- ○ロ 保険料が15,000円を超えて、40,000円までの場合…15,000円+(保険料-15,000円)×(1/2)
- ○ハ 保険料が40,000円を超えて、70,000円までの場合…27,500円+(保険料-40,000円)×(1/4)
- ○ニ 保険料が70,000円を超える場合…35,000円
- (6) 地震保険料控除
支払った地震保険料の金額の合計額の2分の1に相当する金額が控除される。(最高25,000円)
経過措置として、平成18年12月31日までに締結した長期損害保険契約等(地震保険料控除の適用を受けるものを除く。)に係る保険料等は従前どおり適用する(最高10,000円)。ただし、地震保険料控除とあわせて適用する場合には、合計で最高25,000円とする。 - (7) 障害者控除
納税義務者又はその同一生計配偶者、扶養親族が障害者である場合には、障害者一人につき26万円が控除される。
なお、納税義務者又はその同一生計配偶者、扶養親族が特別障害者である場合には、30万円が控除される。
また、特別障害者が同居している場合は、53万円が控除される。 - (8) 寡婦控除
納税義務者が寡婦である場合には、26万円が控除される。 - (9) ひとり親控除
納税義務者がひとり親である場合には、30万円が控除される。 - (10) 勤労学生控除
納税義務者が勤労学生である場合には、26万円が控除される。 - (11) 配偶者控除
控除対象配偶者を有する所得割の納税義務者の区分に応じ、それぞれ次に定める金額が控除される。 - ・ 前年の合計所得金額が900万円以下である場合 33万円(老人控除対象配偶者である場合には 38万円)
- ・ 前年の合計所得金額が900万円を超え950万円以下である場合 22万円(老人控除対象配偶者である場合 26万円)
- ・ 前年の合計所得金額が950万円を超え1000万円以下である場合 11万円(老人控除対象配偶者である場合 13万円)
〔同一生計配偶者〕
同一生計配偶者とは、納税義務者と生計を一にする配偶者のうち、前年の合計所得金額が48万円以下のものをいう(法23①七、292①七)。
〔控除対象配偶者〕
控除対象配偶者とは、同一生計配偶者のうち、前年の合計所得金額が1,000万円以下である納税義務者の配偶者をいう(法23①八、292①八)。 - (12) 配偶者特別控除
自己と生計を一にする配偶者(前年の合計所得金額が133万円以下であるもので、事業専従者とされていないものに限る。)で控除対象配偶者に該当しないものを有する所得割の納税義務者(前年の合計所得金額が1,000万円以下である者に限る。)について、それぞれ次に定める金額が控除される。 - ① 納税義務者の前年の合計所得金額が900万円以下である場合
- ・ 配偶者の前年の合計所得金額が100万円以下である場合 33万円
- ・ 配偶者の前年の合計所得金額が100万円を超え130万円以下である場合
38万円-(配偶者の前年の合計所得金額-93万円)
(注) 当該( )内の計算で求めた金額が、5万円の整数倍の金額から3万円を控除した金額でないときは、5万円の整数倍の金額から3万円を控除した金額でその求めた金額に満たないもののうち最も多い金額とする。 - ・ 配偶者の前年の合計所得金額が130万円を超える場合 3万円
- ② 納税義務者の前年の合計所得金額が900万円を超え950万円以下である場合
上記の配偶者の前年の合計所得金額の区分ごとに、それぞれの控除額の3分の2の金額(1万円未満の端数がある場合には、これを切り上げた額)。 - ③ 納税義務者の前年の合計所得金額が950万円を超え1,000万円以下である場合
上記の配偶者の前年の合計所得金額の区分ごとに、それぞれの控除額の3分の1の金額(1万円未満の端数がある場合には、これを切り上げた額)。
- (13) 扶養控除
納税義務者に控除対象扶養親族があるときは各親族につき33万円が控除される。また、 - ○イ 控除対象扶養親族のうち年齢70歳以上の者(老人扶養親族)については、老人扶養控除として38万円が、
- ○ロ 控除対象扶養親族のうち年齢19~22歳の者(特定扶養親族)については、特定扶養控除として45万円が、通常の扶養控除に代えて控除される。
なお、老人扶養親族が居住者又は居住者の配偶者の直系尊属であり、かつ、これらの者のいずれかと同居している場合には、老人扶養控除に代えて同居老親等扶養控除として45万円が控除される。
〔扶養親族の定義〕
扶養親族とは、納税義務者の親族(その納税義務者の配偶者を除く。)並びに児童福祉法の規定により里親に委託された児童(18歳未満の者に限る。)及び老人福祉法の規定により養護受託者に委託された老人のうち、その納税義務者と生計を一にするもので前年の合計所得金額が48万円以下である者をいう(法23①九、292①九)。
〔控除対象扶養親族の定義〕
控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、16歳以上の者をいう(法34①十一、314の2①十一)。 - (14) 基礎控除
所得割の納税義務者の前年の合計所得金額の区分に応じ、それぞれ次に定める金額が控除される(法34②、314の2②)。 - ・前年の合計所得金額が2400万円以下である場合 43万円
- ・前年の合計所得金額が2400万円を超え2450万円以下である場合 29万円
- ・前年の合計所得金額が2450万円を超え2500万円以下である場合 15万円
- ・前年の合計所得金額が2500万円を超える場合 基礎控除の適用なし
(備考) 所得税の納税義務を有しない所得割のみの納税義務者である給与所得者について、特定支出の額が給与所得控除額の2分の1に相当する金額を超える場合は、申告により、その超える部分の金額を控除することができる(法32⑪、313⑪)。
なお、個人住民税の課税標準は前年の所得について算定した所得金額であるので、所得税の納税義務者については前年分の所得税において適用された特定支出の控除が個人住民税にもそのまま適用される。
総所得金額から控除しきれない所得控除額は、分離課税とされる土地の譲渡等に係る課税事業所得等の金額、課税短期譲渡所得金額又は課税長期譲渡所得金額の計算上控除される(法附則33の3、34、35)。
所得税の項106頁参照。
雑損控除で控除不足があるときは翌年度以降3年間に繰越して控除が受けられる(法32⑨、313⑨)。
雑損控除、医療費控除の適用範囲及び計算方法は所得税の場合と同様であるが、所得金額の計算が、若干、所得税と異なるため、控除金額に差異が生ずることがある。
分離課税とされる土地の譲渡等に係る事業所得等の金額、短期譲渡所得の金額又は長期譲渡所得の金額がある場合には、控除額の計算の基礎とされる総所得金額等の合計額に含められる(法附則33の3、34、35)。
医療費控除と選択適用となる。
(注) 令和5年度分から令和9年度までの個人住民税については、特例の対象となる医薬品の範囲が見直された上で、適用することができる。
特別障害者、その他の障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生であるかどうかの判定は、前年の12月31日(前年の中途において死亡したものについては死亡の時)の現況により判定する(法34⑧、314の2⑧)。
障害者とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者、失明者その他の精神又は身体に障害がある者をいう(法23①十、292①十、令7、46)。
特別障害者とは、障害者のうち、精神又は身体に重度の障害がある者をいう(法34①六、314の2①六、令7の15の7、48の7)。
寡婦とは、ひとり親に該当せず、①夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族を有する者又は②夫と死別した後婚姻をしていない者若しくは夫の生死の明らかでない一定の者で、合計所得金額が500万円以下である者をいう(法23①十一、292①十一、令7の2、46の2)。
ひとり親とは、現に婚姻していない者又は配偶者の生死が明らかでない者のいずれかに該当し、かつ、その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の者がいないこと、他の者の扶養親族等とされていない生計を一にする子で合計所得金額が所得税の基礎控除相当額以下のものを有する者のうち、合計所得金額が500万円以下のものをいう(法23①十二、292①十二、令7の2の2、46の2の2)。
勤労学生とは大学、高等学校の学生、生徒等で、前年の合計所得金額のうち、①自己の勤労による事業所得、給与所得、退職所得又は雑所得があり、②自己の勤労による所得以外の所得金額が10万円以下で、③合計所得金額が75万円以下の者をいう(法34⑨、314の2⑨)。
特定支出の額については、所得税(給与所得)の項を参照。