1 源泉徴収の対象となる国内源泉所得(外国法人は<>印のものに限る。)(法161、212)。
- <①>民法に規定する組合契約(これに類するものを含む。)に基づいて恒久的施設を通じて行う事業から生ずる利益でその組合契約に基づいて配分を受ける一定のもの
- <②>国内にある土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若しくは構築物の譲渡による対価
- <③>国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業を行う者が受けるその人的役務の提供の対価
- <④>国内にある不動産、不動産の上に存する権利又は採石権の貸付け、租鉱権の設定、居住者若しくは内国法人に対する船舶、航空機の貸付けによる対価
- <⑤>国債、地方債又は内国法人が発行する債券の利子(分離利息振替国債に係るものを除く。)、外国法人の発行する債券の利子のうちその外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係るもの(外国法人が国内において行う事業に帰せられる一定のものに限る。)
- <⑥>配当等(剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配、基金利息並びに投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く。)及び特定受益証券発行信託の収益の分配)のうち次に掲げるもの
- イ 内国法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配(出資に係るものに限る。)又は基金利息
- ロ 国内にある営業所に信託された投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く。)又は特定受益証券発行信託の収益の分配
- <⑦>国内で業務を行う者に対する貸付金の利子(債券の買戻又は売戻条件付売買取引から生じる一定の差益を含む。)
- <⑧>国内で業務を行う者から受ける工業所有権、著作権(著作隣接権を含む。)、機械等の使用料等
- ⑨ 公的年金若しくは国内における勤務その他の人的役務の提供により受ける俸給、給料、歳費、賞与等の諸給与、報酬又は退職手当
- <⑩>国内で行う事業の広告宣伝のための賞金
- <⑪>保険会社と締結した保険契約に基づいて受ける年金
- <⑫>次に掲げる給付補填金、利息、利益又は差益
- イ 定期積金に係る契約に基づく給付補填金
- ロ 相互掛金に係る契約に基づく給付補填金
- ハ 抵当証券に基づき締結されたその債券の元本及び利息の支払等に関する事項を含む一定の契約により支払われる利息
- ニ 金その他の貴金属等の買入れ及び売戻しに関する契約で、その契約において定められた期日においてその契約に定められた金額により金その他の貴金属等を売り戻す旨の定めがあるものに基づく利益
- ホ 外国通貨建預貯金でその元本及び利子をあらかじめ約定した率により本邦通貨に換算して支払うこととされているものの差益
- ヘ 保険会社と締結した保険契約(これらに類する共済契約を含む。)で保険料等を一時に又はこれに準ずる一定の方法で支払うこと等を内容とするもののうち、保険期間等が5年以下のもの及び保険期間等が5年を超えるもので5年以内に解約されたものに基づく差益
- <⑬>国内で事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約に基づいて受ける利益の分配
(注)1 次の国内源泉所得については源泉徴収を要しない(法161、令281の3、328)。 - ① 俳優、音楽家その他の芸能人又はプロのスポーツ選手の役務の提供に係る対価又は報酬で、不特定多数の者から支払われるもの
- ② 土地若しくは土地の上に存する権利又は家屋の貸付けの対価で、その土地家屋等を自己又はその親族の居住の用に供するために借り受けた個人から支払われるもの
- ③ 土地建物等の譲渡による対価(その金額が1億円超のものを除く。)で、その土地建物等を自己又はその親族の居住の用に供するために譲り受けた個人から支払われるもの
- ④ 分離課税となる給与又は報酬(法169)で確定申告を要することとされている(法172①)もの
2 懸賞金付預貯金等の懸賞金等、割引債に係る償還差益及び恒久的施設を有する非居住者で特定口座内保管上場株式等に係る譲渡所得等の源泉徴収等の特例を選択している者が受ける上場株式等に係る譲渡の対価については、源泉徴収の対象とされている(措法37の11の4、41の9、41の12)(懸賞金付預貯金等の懸賞金等に対する源泉徴収事務、償還差益に対する源泉徴収事務及び上場株式等に係る譲渡所得についての源泉徴収事務の項参照)。
3 免税芸能法人等は、国外において、その事業のために芸能人等の役務提供をする他の非居住者等に対してその役務提供に係る給与若しくは報酬又は対価を支払うときは、その支払の際に、その額に20%の税率を乗じて計算した所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月末日までに納付しなければならないこととされている(措法41の22)。
2 源泉徴収税額
これらの国内源泉所得に係る源泉徴収税額は、次の区分に応じ、その支払額に次の税率を乗じて計算した額である(法213)。
<②>……10%
<①>、<③>、<④>、<⑥>~<⑪>及び<⑬>……20%
<⑤>及び<⑫>……15%
ただし、<⑥>のうち私募公社債等運用投資信託の受益権又は私募の特定目的信託の社債的受益権の収益の分配の収益については、15%の源泉分離課税とされている(措法8の2)。
(注) 次の国内源泉所得については、次により計算した額に上記の税率を適用して源泉徴収税額を算出することとされている(法213、措法41の15の3③)。
- イ ⑨ (公的年金に限る。)…支払額から支払月数1月分につき5万円(受給者が65歳以上のときは9万5千円)を控除した額
- ロ <⑩>…支払額から50万円を控除した額
- ハ <⑪>…支払額からその支払額に対応する保険料等の額を控除した額
左の国内源泉所得の支払が国外において行われる場合は、その支払をする者が国内に住所、居所を有し、又は国内に事務所等を有するときは、その者が当該国内源泉所得を国内において支払うものとみなして、源泉徴収を行い、翌月末日までに納付する(法212②)。
金融機関等の受ける次の利子等(金融商品取引業者等にあっては(1)の公社債の利子、資本金等が1億円以上の内国法人で一定のものにあっては(1)の公社債の利子のうち一定のもの)については、源泉徴収はしないこととされている(措法8)。
- (1) 社債、株式等の振替に関する法律に規定する振替口座簿に記載又は記録されていた公社債の利子
- (2) 預貯金の利子(譲渡性預金のうち、その金融機関の保有していない期間内に生じたものを除く。)
- (3) 金融機関を委託者及び受益者とする合同運用信託又は特定公募公社債等運用投資信託の収益の分配で一定のもの
恒久的施設を有する非居住者又は外国法人が税務署長の証明書の交付を受け、その証明書を支払者に提示したときはその者に支払う特定の国内源泉所得については源泉徴収の必要はない(法180、212①、214)。
外国信託会社が引き受けた退職年金等信託の信託財産に属する公社債、株式等につき国内源泉所得に該当する利子等又は配当等の支払をする者の帳簿にその公社債等が信託財産に属する旨等の搭載を受けている場合には、その利子等又は配当等については源泉徴収の必要はない(法180の2②)。
非居住者又は外国法人に支払われる利子で次のものは非課税とされる(措法6、7)。
- (1) 平成10年4月1日以後に法人により国外において発行された債券(外国法人により発行された債券にあっては、その外国法人が国内において行う事業に係る一定のものに限る。)で利子の支払が国外払であるものの利子及び外貨公債の発行に関する法律第2条第1項及び第4条に規定する外貨債のうち、国外において発行されたものでその利子の支払が国外において行われるものの利子
- (2) 平成10年4月1日以後に外国為替及び外国貿易法に規定する金融機関に預入等した預金等で特別国際金融取引勘定に経理されたものの利子(債券の買戻又は売戻条件付売買取引から生ずる一定の差益を含む。)
免税芸能法人等とは、国内において芸能人等の役務提供を主たる内容とする事業を行う非居住者又は外国法人(国内に居所、事業所等を有する者を除く。)で、芸能人等の役務提供に係る対価につき、条約の規定に基づき、国内に恒久的施設を有しないこと等により、所得税が免除されるものをいう。
一定の上場株式の配当等に係る配当所得については、上場株式等の配当等に係る源泉徴収税率等の特例制度(348頁参照)及び配当所得の確定申告不要制度(129頁参照)の対象とされる(措法8の5①、9の3①)。
公募株式投資信託の受益権の販売をする金融商品取引業者等が、顧客からの買取請求により公募株式投資信託の受益権を買い取った場合において、当該受益権が、その設定(追加設定を含む。)の際に当該顧客に取得され、その取得の時から社債、株式等の振替に関する法律に規定する振替口座簿への記載又は記録その他の方法により管理されているときは、当該金融商品取引業者等が当該受益権の買取りの日又は同日の翌営業日に当該公募株式投資信託の終了又は一部の解約により支払を受ける収益の分配のうち当該顧客が所有していた期間に対応する部分については、一定の要件の下で、源泉徴収はしないこととされている(措法9の5)。
内国法人又は恒久的施設を有する外国法人が、上場証券投資信託等(公社債投資信託以外の証券投資信託でその設定に係る受益権の募集が公募により行われたもので、その受益権が金融商品取引所に上場されていることその他一定の要件を満たすものをいう。)の終了又は一部の解約により支払を受ける金銭等のうち、収益の分配として課税される部分については、源泉徴収の必要はない(措法9の4の2①)。この場合において、国内においてその上場証券投資信託等の終了(信託の併合に係るものである場合は、一定のものに限る。)又は一部の解約により金銭等の支払をする者は、その支払をする金銭等の額その他一定の事項を記載した支払調書を、その上場証券投資信託等の終了又は一部の解約があった日の属する月の翌月末日までに、その支払をする者の所轄税務署長に提出しなければならない(措法9の4の2②)。