税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

原価差額の調整

この解説は最終更新日から1年以上経過しており、現行法令に準拠していない可能性があります。

税務研究会お試し

 原価差額とは、製造等にかかる棚卸資産の計算の規定(令32①二)による取得価額の計算の基礎となる実際原価と法人の計算等による原価との差額で、材料費差額、労務費差額、経費差額等のほか、内部振替差額も含まれる(基通5-3-2)。

備考

原価差額の調整方法は、通達により標準的な方法が定められているが、法人が通達の方法以外の方法によつて原価差額の調整を行っている場合に、その方法が法人の採用する原価計算の方法、業種、業態等の特殊性に適合したより合理的な方法であると認められる場合には、その方法が認められる。

原価差額の調整期間

 事業年度が1年である法人の原価差額の調整は、継続適用を条件に、各事業年度を上期と下期とに区分し、それぞれの期間について行うことができる。この場合、下記の基通5-3-3及び基通5-3-4の適用に当たっては、上期及び下期のそれぞれの期間ごとに、その期間に発生した原価差額によりその調整の要否を判定することに留意する(基通5-3-2の2)。

原価差額が借方に生じた場合の取扱い

 原価差額のうち期末棚卸資産に対応する部分の金額は、原則としてその期末棚卸資産の評価額に加算しなければならない(基通5-3-1)。

 原価差額が総製造費用のおおむね1%以下である等少額である場合には、その計算の明細を確定申告書に添付したときは、原価差額の調整を行わないことができる(基通5-3-3)。

 棚卸資産につき算定した取得価額が実際の取得価額に満たない場合のその差額が各事業ごとに総製造費用のおおむね1%相当額を超える場合においても、原価差額の調整単位を工場ごととしている場合には、各工場における原価差額のうちにそれぞれの総製造費用の1%相当額以内の金額のものがあるときは、その工場における原価差額は、その計算の明細を確定申告書に添付して調整を行わないことができる(基通5-3-4)。

 原価差額の調整は、法人の採用する原価計算の方法、業種、業態等に応じ合理的な方法で行うべきであるが、その調整を一括して次の算式によって計算した金額を期末棚卸資産に配賦する方法によることができる(基通5-3-5)。

 原価差額×{期末の製品、半製品、仕掛品の合計額/(売上原価+期末の製品、半製品、仕掛品の合計額)}

 原価差額のうち内部振替差額については、その調整を他の原価差額と区別してその内部振替差額に適合した合理的な方法により行うことができる(基通5-3-6)。

 原価差額を個々の期末棚卸資産に配賦しないで一括して処理している場合には、その一括して処理されている金額は、その翌事業年度の損金の額に算入することができる(基通5-3-7)。

 原材料の受入れについて見積原価等を採用している場合に生ずる原材料受入差額については、当期原材料払出高と期末原材料棚卸高とに適正に配賦し、期末原材料棚卸高に対応する金額を個々に配賦しないで一括処理することができる。この場合において、当期原材料払出高に対応する原材料受入差額は当期の原価差額に、また、期末原材料棚卸高に対応する原材料受入差額は翌事業年度の製造原価に、それぞれ含める(基通5-3-8)。

備考

総製造費用の計算が困難であるときは、法人の計算による製品受入高合計に仕掛品及び半製品の期末棚卸高を加算し、仕掛品及び半製品の期首棚卸高を控除して計算することができる(基通5-3-3後段)。

原価差額が少額かどうかの判定は事業の種類ごとに行うが、製品の種類ごとに行うこともできる(同(注))。

この計算方法を適用する場合の分母及び分子の金額は法人の計算額による。また、二以上の事業を営んでいる場合には、事業の種類ごとに区分して計算する(基通5-3-5(注)1、2)。

直接原価計算制度を採用している場合には、左の調整方法の適用はできない。ただし、この調整方法を適用することについて、合理性があると認めて税務署長(調査課所管法人にあっては国税局長)が承認をした場合は、この限りではない(同(注)3)。

自己生産の固定資産の取得価額の計算に際しても同様にその原価差額を取得価額に配賦しなければならない(基通7-3-17)。

原価差額が貸方に生じた場合の取扱い

 棚卸資産につき算定した取得価額が実際の取得価額を超えている場合(原価差額が貸方に生じた場合)の差額のうち、損金に算入されないため確定申告に際して自己否認した金額から成る部分については、申告調整ができる(基通5-3-9)。

  • 税務通信

     

    経営財務