税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

取得価額に算入すべき費用

1 土地等の取得価額

  • (1) 埋立て、地盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用(基通7-8-2(5)に該当する修繕費は除く。)は土地の取得価額に算入するが、土地についてした防壁、上水道、下水道、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められる費用の額はそれぞれの構築物の取得価額とすることができる。
      専ら、建物、構築物等の建設のために行う地質調査、地盤強化、地盛り、特殊な切土等土地の改良のためのものでない工事に要した費用の額は、当該建物、構築物等の取得価額に算入する(基通7-3-4)。
  • (2) 都道府県又は市町村からその工場誘致等により土地その他の固定資産を取得し、購入の代価のほかに、その取得に関連して都道府県若しくは市町村又はこれらの指定する公共団体等に寄附金又は負担金の名義で金銭を支出した場合においても、その支出した金額が実質的にみてその資産の代価を構成すべきものと認められるときは、その支出した金額はその資産の取得価額に算入される(基通7-3-3)。
  • (3) 建物等の存する土地(借地権を含む。)を建物等とともに取得した場合又は自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は、その金額を控除した金額)は、その土地の取得価額に算入する(基通7-3-6)。
  • (4) 新工場の落成、操業開始等に伴って支出する記念費用等のように減価償却資産の取得後に生ずる付随費用は、その減価償却資産の取得価額に算入しないことができるものとするが、工場、ビル、マンション等の建設に伴って支出する住民対策費、公害補償費等の費用(基通7-3-11の2の(2)及び(3)に該当する開発負担金を除く。)で当初からその支出が予定されているもの(毎年支出することとなる補償金を除く。)については、たとえその支出が建設後の支出であってもその減価償却資産の取得価額に算入する(基通7-3-7)。
  • (5) 事業から生ずる残し(滓)等によって造成した埋立地の取得価額は、その残し等の処理のために要した運搬費、築石費、捨石工事費等(埋立免許料等を含む。)の合計額(合計額が埋立工事が完了した日の埋立地の価額を超える場合には、その超える金額を控除した金額)による。ただし、次のいずれかの方法によっているときは、これを認める(基通7-3-11)。
    • ① 埋立工事中の各事業年度において支出した埋立費を埋立地の原価に算入し、その事業年度終了の日における原価の合計額が、その埋立地が同日に完成したものとした場合の埋立地の価額を超えるに至った場合において、その事業年度において支出した埋立費のうち、その超える金額を損金の額に算入して計算した原価をその取得価額とする方法
    • ② 埋立費のうち埋立免許料等並びに残し等の処理のための築石費及び捨石工事費を埋立地の原価に算入し、その残し等の処理のために要した運搬費のような築石費及び捨石工事費以外の費用をその支出の都度損金に算入するとともに、その埋立地の所有権を取得した時(所有権を取得する前にその埋立地に工作物を設置する等埋立地を使用するに至ったときその使用部分については、使用の時)においてその取得時の埋立地の価額(その価額が埋立費の合計額を超えるときは、その合計額)をその取得価額として修正する方法

備考

土地、建物等の取得に際し、その土地、建物等の使用者に支払う立退料その他立退きのために要した金額は、その土地、建物等の取得価額に算入する(基通7-3-5)。

公有水面を埋め立てて取得した土地の取得価額には、埋立て費用のほか埋立免許料等も含まれる(基通7-3-10)。

(開発負担金)

  • (6) 固定資産として使用する土地、建物等の造成又は建築等(以下「宅地開発等」という。)の許可を受けるために地方公共団体に対してその宅地開発等に関連して行われる公共的施設等の設置又は改良の費用に充てるものとして支出する負担金等(これに代えて提供する土地又は施設を含み、純然たる寄附金の性質を有するものを除く。)については、その負担金等の性質に応じそれぞれ次により取り扱うものとする(基通7-3-11の2)。
    • ① 例えば団地内の道路、公園又は緑地、公道との取付道路、雨水調整池(流下水路を含む。)等のように直接土地の効用を形成すると認められる施設に係る負担金等は、その土地の取得価額に算入する。
    • ② 例えば上水道、下水道、工業用水道、汚水処理場、団地近辺の道路(取付道路を除く。)等のように土地又は建物等の効用を超えて独立した効用を形成すると認められる施設でその法人の便益に直接寄与すると認められるものに係る負担金等は、それぞれの施設の性質に応じて無形減価償却資産の取得価額又は繰延資産とする。
    • ③ 例えば団地の周辺又は後背地に設置されるいわゆる緩衝緑地、文教福祉施設、環境衛生施設、消防施設等のように主として団地外の住民の便益に寄与すると認められる公共的施設に係る負担金等の額は、繰延資産とし、その償却期間は8年とする。

備考

左の取扱いは、地方公共団体等が造成した土地を取得するに当たり土地の代価のほかに支出する開発負担金の性質を有する金額でその内容が具体的であるものについても適用される(基通7-3-11の3)。

工場用地等の造成に伴い埋蔵文化財の発掘調査等をするために要した費用の額は、土地の取得価額に算入しないで、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。ただし、文化財の埋蔵されている土地をその事情を考慮して通常の価額より低い価額で取得したと認められる場合には、取得価額に算入しなければならない(基通7-3-11の4)。

(私道の寄附)

  • (7) 専ら所有地の利用のために設置されている私道を地方公共団体に寄附した場合には、その私道の帳簿価額をその土地の帳簿価額に振り替えるものとし、その寄附をしたことによる損失はないものとする(基通7-3-11の5)。

2 借地権の取得価額

 借地権の取得価額は、土地の賃貸借契約又は転貸借契約(契約の更新及び更改を含む。以下「借地契約」という。)に当たり借地権の対価として土地所有者又は借地権者に支払った金額のほか、次に掲げるような金額を含む。ただし、①に掲げる金額が建物等の購入代価のおおむね10%以下の金額であるときは、強いてこれを区分しないで建物等の取得価額に含めることができる(基通7-3-8)。

  • ① 土地の上に存する建物等を取得した場合におけるその建物等の購入代価のうち借地権の対価と認められる部分の金額
  • ② 賃借した土地の改良のためにした地盛り、地ならし、埋立等の整地に要した費用(基通7-8-2の(5)の該当する修繕費は除く。)の金額
  • ③ 借地契約に当たり支出した手数料その他の費用の額
  • ④ 建物等を増改築するに当たりその土地所有者等に対して支出した費用の額

備考

定期借地権の設定時において、借地権者が借地権設定者に対して借地に係る契約期間の賃料の一部又は全部を一括前払いの一時金として支払った場合には、この一時金を「前払費用」として処理することとなる。

3 林地の取得価額

 天然林を人工林に転換するために必要な地ごしらえ又は治山の工事のために支出した金額(構築物の取得価額に算入されるものを除く。)は、林地の取得価額に算入する(基通7-3-9)。

4 立木の取得価額

 植栽のための地ごしらえ費、種苗費、植栽費(通常の補植に要する費用を含む。)、ぶ育費、間伐費及び管理費等植栽のための地ごしらえから成林に至るまでの造林に要する一切の費用の金額は、山林立木の取得価額に算入する。ただし、おおむね毎年(将来にわたる場合を含む。)輪伐を行うことを通例とする造林に要する費用のうち、ぶ育費、間伐費及び管理費については、その支出の日の属する事業年度の損金の額に算入することができる(基通7-3-13)。

備考

左の取扱いによると、原則として間伐費は山林立木の取得価額に算入されるので、間伐材を譲渡した場合には譲渡原価はなく、その収益の全額が益金に算入されることになるが、その譲渡による収益を益金に算入するとともに、間伐費及びその間伐に係る山林立木の帳簿価額のうち間伐材に対応する金額の合計額(当該収益の額を限度とする。)を譲渡原価として損金に算入することができる(基通7-3-13(注))。

5 機械等の移設費

 集中生産又はよりよい立地条件で生産を行う等のため一つの事業場の機械装置を他の事業場に移設した場合又はガスタンク、鍛圧プレス等多額の据付費を要する機械装置を移設した場合(措置法第65条の2に規定する収用換地等に伴い移設した場合を除く。)には、運賃、据付費等その移設に要した費用(解体費を除く。以下「移設費」という。)は、その機械装置(当該機械装置に係る資本的支出を含む。)の取得価額に算入し、その機械装置の移設直前の帳簿価額のうちに含まれている据付費(以下「旧据付費」という。)に相当する金額は、損金の額に算入する。この場合において、その移設費の合計額がその機械装置の移設直前の帳簿価額の10%相当額以下であるときは、旧据付費に相当する金額を損金に算入しないで、移設費をその移設した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる(基通7-3-12)。

備考

主として新規の生産設備の導入に伴って行う既存の生産設備の配置換えのためにする移設は、原則として集中生産又はよりよい立地条件において生産を行う等のための移設には当たらない(基通7-3-12(注))。

6 無形減価償却資産の取得価額

  • (1) 繊維工業における織機の登録権利、許可漁業の出漁権、タクシー業のいわゆるナンバー権のように法令の規定、行政官庁の指導等による規制に基づく登録、認可、許可、割当て等の権利を取得するために支出する費用は、営業権に該当し、その取得価額とされる(基通7-1-5)。
  • (2) 下水道法第2条第3号に規定する公共下水道を使用する排水設備を新設し、又は拡張する場合において、公共下水道管理者に対してその新設又は拡張により必要となる公共下水道の改築に要する費用を負担するときは、その負担金の額については、水道施設利用権に準じて取り扱われ、その取得価額とする(基通7-1-8)。
  • (3) 他から出願権(工業所有権に関し特許又は登録を受ける権利をいう。)を取得した場合のその取得の対価については、無形固定資産に準じてその出願権の目的たる工業所有権の耐用年数により償却することができるが、その出願により工業所有権の登録があったときは、その出願権の未償却残額(工業所有権を取得するために要した費用があるときは、その費用を加算した金額)に相当する金額をその工業所有権の取得価額とする(基通7-3-15)。
  • (4) 自己の製作に係るソフトウエアの取得価額は、令第54条第1項第2号の規定に基づきそのソフトウエアの製作のために要した原材料費、労務費及び経費の額並びにそのソフトウエアを事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額とされる。この場合、その取得価額については適正な原価計算に基づき算定することとなるが、原価の集計、配賦等につき、合理的であると認められる方法により継続して計算している場合には、これを認めるものとする。また、他の者から購入したソフトウエアについて、そのソフトウエアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用の額は、そのソフトウエアの取得価額に算入する(基通7-3-15の2)。
  • (5) 温泉を湧出する土地を取得した場合におけるその取得に要した金額からその土地に隣接する温泉を湧出しない土地の価額に比準して計算した土地の価額を控除した金額又は温泉を利用する権利を取得するために要した金額については、水利権に準じて取り扱われ、その取得価額とする(基通7-1-7)。
  • (6) 試掘権の目的となっている鉱物に係る鉱区につき採掘権を取得した場合には、試掘権の未償却残額と採掘権の出願料、登録免許税その他その取得のために直接要した費用の合計額を採掘権の取得価額とする(基通7-6-1の2)。
  • (7) 電話加入権の取得価額には、電気通信事業者との加入電話契約に基づいて支出する工事負担金のほか、屋内配線工事に要した費用等電話機を設置するために支出する費用(当該費用の支出の目的となった資産を自己の所有とする場合のその設置のために支出するものを除く。)が含まれる(基通7-3-16)。

備考

例えばその権利に係る事業を廃止する者に対して残存業者が負担する補償金のようにその権利の維持又は保全のために支出する費用についても、営業権として減価償却をすることができる(基通7-1-5(注))。

次の費用の額は、ソフトウエアの取得価額に算入しないことができる(基通7-3-15の3)。

  • ① 自己の製作に係るソフトウエアの製作計画の変更等により、仕損じがあったため不要となったことが明らかなものに係る費用の額
  • ② 研究開発費の額(自社利用のソフトウエアについては、その利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかなものに限る。)
  • ③ 製作等のために要した間接費、付随費用等で、その費用の額の合計額が少額(その製作原価のおおむね3%以内の金額)であるもの

温泉を利用する権利だけを取得した場合で、その利用につき契約期間の定めがあるもの(契約期間を延長しない定めのあるものに限る。)については、その契約期間を耐用年数として償却できる(基通7-1-7ただし書)。

電気通信施設利用権には、例えば「電信役務」、「専用役務」、「データ通信役務」、「デジタルデータ伝送役務」、「無線呼出し役務」等の提供を受ける権利が含まれる(基通7-1-9)。

7 その他

 棚卸資産に係る原価差額の調整を要する場合において、原材料等の棚卸資産を固定資産の製作又は建設(改良を含む。)のために供したとき又は自己生産に係る製品を固定資産として使用したときは、その固定資産に係る原価差額は、その取得価額に配賦する(基通7-3-17)。

(注) 社歌、コマーシャルソング等の制作費用は、支出の日の属する事業年度の損金に算入できる(基通7-1-10)。

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