税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

受取配当等の益金不算入

 各事業年度において内国法人から受ける配当等の金額のうち次に掲げる金額の合計額は、益金に算入しない(法23①④)。

  • (1) 完全子法人株式等につき受ける配当等の額 当該配当等の額の合計額
  • (2) 関連法人株式等につき受ける配当等の額 当該配当等の額の合計額から当該関連法人株式等に係る負債利子の額を控除した金額
  • (3) 完全子法人株式等、関連法人株式等及び非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等につき受ける配当等の額 当該配当等の額の50%相当額
  • (4) 非支配目的株式等につき受ける配当等の額 当該配当等の額の20%相当額
    (注1) 青色申告書を提出する保険会社が保有する非支配目的株式等につき支払を受ける配当等の額については、当該配当等の額の40%相当額(措法67の7)。
    (注2) 協同組合等が有する連合会等に対する普通出資につき支払を受ける配当等の額については、当該配当等の額の50%相当額(措法67の868の105)。

備考

受取配当等の益金不算入の規定の適用を受けるためには、申告書にこれに関する記載をしなければならない(法23⑧)。

受取配当等の益金不算入の規定は、名義株等の配当等についても適用がある(基通3-1-1)。

名義書換え失念株の配当には、原則として適用がない(基通3-1-2)。信用取引に係る配当落調整額は、受取配当等の益金不算入に規定する配当等には含まれない(基通3-1-6)。

配当等が事業年度に二以上ある場合の関連法人株式等の判定は、それぞれの配当等の額の支払に係る基準日において有する株式等に基づいて判定する(基通3-1-7の4)。

〔完全子法人株式等の範囲〕

 上記の完全子法人株式等とは、配当等の額の計算期間を通じてその配当等の額の支払を受ける内国法人とその配当等の額を支払う他の内国法人との間に完全支配関係があった場合の当該他の内国法人の株式等をいう(法23⑤、令22の2)。

〔関連法人株式等の範囲〕

 上記の関連法人株式等とは、配当等の額の計算期間を通じて他の内国法人の発行済株式等の3分の1を超える株式等を有している場合の当該他の内国法人の株式等をいう(完全子法人株式等に該当する場合を除く。)(法23⑥、令22の3)。

 計算期間とは、前回の配当等の額の支払に係る基準日の翌日から今回の配当等の額の支払に係る基準日までの期間をいう(令22の2②、22の3②)。

 なお、保有期間の判定に当たって、内国法人が次の事由により次に定める法人から他の内国法人の発行済株式等の総数又は総額の3分の1超の移転を受けた場合には、当該法人が当該株式等を有していた期間は、当該内国法人が当該株式等を有していた期間に含める(令22の3③)。

  • (1) 適格合併 被合併法人
  • (2) 適格分割 分割法人
  • (3) 適格現物出資 現物出資法人
  • (4) 適格現物分配 現物分配法人
  • (5) 特別の法律に基づく承継 被承継法人

〔非支配目的株式等の範囲〕

 上記の非支配目的株式等とは、他の内国法人の発行済株式等の5%以下の株式等を、基準日において有する場合の株式等をいう(法23⑦、令22の3の2)。

(注) 外国株価指数連動型特定株式投資信託以外の特定株式投資信託の受益権は、非支配目的株式等とする(措法67の6)。

〔配当等の範囲〕

 益金不算入の対象となる配当等の額は、剰余金の配当(株式等に係るものに限り、資本剰余金の減少に伴うもの並びに分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)、利益の配当(分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)、剰余金の分配(出資に係るものに限る。)、投資信託及び投資法人に関する法律第137条(金銭の分配)の金銭の分配(出資等減少分配を除く。)又は資産の流動化に関する法律第115条第1項(中間配当)に規定する金銭の分配の額の合計額である(法23①)。

〔短期保有株式の配当等の特例〕

 元本である株式等を配当等の支払に係る基準日以前1月以内に取得し、その末日後2月以内に譲渡した場合には、その元本に係る配当等(みなし配当を除く。)については、益金不算入の取扱いを受けることができない(法23②)。この場合、元本である株式等を配当等の支払に係る基準日以前1月以内に取得し、かつ、その計算期間の末日後2月以内に譲渡したものの計算は、次の算式により行う(令19)。

A×({B×〔D/(C+D)〕}/(B+E))=支払に係る基準日以前1月以内に取得し、かつ、同日後2月以内に譲渡した元本株式等の数

 A……支払に係る基準日後2月以内に譲渡した元本株式等の数

 B……同基準日において所有する元本株式等の数

 C……同基準日の1月前の元本株式等の数

 D……同基準日以前1月間に取得した元本株式等の数

 E……同基準日後2月以内に取得した元本株式等の数

〔自己株式として取得されることを予定して取得した株式に係るみなし配当〕

 受取配当等の益金不算入制度の規定は、法人がその受ける配当等の額(発行法人による自己株式の取得により、その法人が受ける配当等の額とみなされる金額に限る。)の元本である株式等で、その配当等の額の生ずる基因となる法人税法第24条第1項第5号に掲げる事由(自己株式の取得)が生ずることが予定されているものの取得をした場合におけるその取得をした株式等に係る配当等の額でその予定されていた事由に基因するものについては、適用しない(法23③、81の4③)。

 また、その取得した株式等が適格合併、適格分割又は適格現物出資により被合併法人、分割法人又は現物出資法人から移転を受けた株式等である場合には、益金不算入制度が適用されないこととなるみなし配当等の額は、その予定されていた事由がこれらの法人のその株式等の取得の時においても生ずることが予定されていた場合におけるその予定されていた事由に基因する配当等の額となる(令20155の7の2)。

〔負債利子の控除〕

 配当等を受けた場合において法人の支出した負債の利子があるときは、関連法人株式等に係る益金不算入の受取配当等からそれに対応する部分の以下の金額を控除しなければならない(以下「総資産あん分法」という)(法23④、令22①)。

  控除負債利子額=当期の総負債利子×(当期末及び前期末の関連法人株式等の帳簿価額/当期末及び前期末の総資産の帳簿価額)

 上記の計算については、次による。

  • (1) 支払利子は、負債の利子のほか利子に準ずるものを含む。なお国税の利子税や地方税の延滞金は支払利子に含めないことができるが、固定資産や繰延資産の取得価額に算入した負債の利子は、支払利子に含まれる(基通3-2-23-2-4の2)。
  • (2) 総資産の帳簿価額は、前事業年度末及びその事業年度末の貸借対照表に計上された総資産の帳簿価額の合計額である。この場合の総資産の帳簿価額の計算については、次による(令22①一、基通3-2-53-2-6)。
    • ① 固定資産の帳簿価額を損金経理により減額することに代えて積立金として積み立てている金額、租税特別措置法の特別償却準備金として積み立てている金額及び土地の再評価に関する法律の規定による土地の再評価差額は、総資産の帳簿価額から控除する。
    • ② 支払承諾見返勘定又は保証債務見返勘定のように単なる対照勘定として貸借対照表の資産及び負債の部に両建経理されている金額がある場合には、その資産の部に経理されている金額は、総資産の帳簿価額から控除する。
    • ③ 貸倒引当金勘定の金額が、金銭債権から控除する方法により取立不能見込額として貸借対照表に計上されている場合には、その控除前の金額を、注記の方法により取立不能見込額として貸借対照表に計上されている等の場合にはこれを加算した金額をそれぞれ金銭債権の帳簿価額とすることができる。
    • ④ 退職給付信託における信託財産の額が、退職給付引当金勘定の金額と相殺されて貸借対照表の資産の部に計上されず、注記の方法により貸借対照表に計上されている等の場合には、当該信託財産の額を加算した金額を総資産の帳簿価額とすることができる。
    • ⑤ 貸借対照表に計上されている返品債権特別勘定の金額(売掛金から控除する方法により計上されているものを含む。)がある場合には、これを控除した残額を売掛金の帳簿価額とする。
    • ⑥ 貸倒損失が金銭債権から控除する方法により取立不能見込額として貸借対照表に計上されている場合には、これを控除した残額を金銭債権の帳簿価額とする。
    • ⑦ 貸借対照表に計上されている補修用部品在庫調整勘定又は単行本在庫調整勘定の金額がある場合には、これらの金額を控除した残額をその補修用部品在庫調整勘定又は単行本在庫調整勘定に係る棚卸資産の帳簿価額とする。
    • ⑧ 法人が税効果会計を適用している場合において、貸借対照表に計上されている繰延税金資産の額は、総資産の帳簿価額に含める。

備考

支払利子には、支払手形の割引料負担額、保証金等の預り金利子が含まれるが、売上割引料は含まない(基通3-2-13-2-3の2)。

割賦購入資産の代価に含まれる利息相当分については、これをその資産の取得価額に算入しない場合に限り、支払利子に含める(基通3-2-3)。

輸入決済手形借入金利息は、委託買付契約に係るもので、その利息相当額を委託者に負担させることとしている場合でも負債の利子となる(基通3-2-4本文)。

税効果会計を適用している場合において繰延税金負債がある場合の留意点については、基通3-2-7参照。

(簡便計算)

  • (4) 平成27年4月1日に存する法人(平成27年4月1日後に行われる適格合併に係る合併法人については、当該法人及び当該適格合併に係る被合併法人の全てが平成27年4月1日に存していたものに限る。)に限り、上記の算式に代え、次の算式により計算した金額をもって配当等から控除する負債の利子額とする簡便計算方法を選択することができる(令22④)。
      控除負債利子額=当期の総負債利子×(総資産あん分法の方法によって計算した基準年度の控除負債利子額/基準年度の総負債利子)

備考

基準年度とは、平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した各事業年度をいう。なお、左記算式による割合に小数点3位未満の端数があるときは、その端数を切り捨てる(令22④)。

基準年度内に株式等を有していなかったため控除すべき負債の利子がない事業年度があるときは、その事業年度の支払利子額は左の計算に関係させない(基通3-2-12)。

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