- (1) 資産の評価益は、原則として所得の計算上益金に算入しない(法25①)。ただし、①会社更生法等の規定により行う評価換え、②保険会社が保険業法の規定に従って行う株式の評価換えをする場合には、これらの評価換えをする日の時価を限度として評価益を計上することができる(法25②、令24、基通4-1-1)。
- (2) また、再生計画認可の決定など特定の事実が生じた場合には、その有する資産の評価益の額をその特定の事実が生じた日の属する事業年度に計上することができる(法25③)。
- ① 特定の事実とは、次に掲げるものとされる(法25③、令24の2①、規8の6①②)。
再生計画認可の決定があったことに準ずる事実(再建計画がⅰからⅲまで及びⅳ又はⅴに掲げる要件に該当するものに限る。) - ⅰ 一般に公表された債務処理手続についての準則(公正かつ適正なものと認められるものであって、次に掲げる事項が定められているものに限る。ただし、特定の者(政府関係金融機関、株式会社地域経済活性化支援機構及び協定銀行を除く。)が専ら利用するためのものは除く。)に従って策定されていること
- (ⅰ) 公正な価額による旨の定めのある資産評定に関する事項
- (ⅱ) 当該準則に従って策定された再建計画であること等を確認する手続及びその確認をする者に関する事項
- ⅱ 債務者の有する資産及び負債につき資産評定が行われ、その価額を基礎とした債務者の貸借対照表(実態貸借対照表)が作成されていること
- ⅲ 実態貸借対照表における資産及び負債の価額、損益の見込み等に基づいて債務免除等をする金額が定められていること
- ⅳ 二以上の金融機関等が債務免除等をすることが定められていること
- ⅴ 政府関係金融機関、株式会社地域経済活性化支援機構又は協定銀行が有する債権等につき債務免除等をすることが定められていること
- ② この評価益の計上の対象となる資産は、次に掲げる資産以外の資産である(法25③、令24の2④)。
- ⅰ 前5年内事業年度等において法人税法又は租税特別措置法の圧縮記帳制度の適用を受けた減価償却資産
- ⅱ 短期売買商品等
- ⅲ 売買目的有価証券
- ⅳ 償還有価証券
- ⅴ 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例又は一括償却資産の損金算入の特例の規定の適用を受けた減価償却資産
- ③ この評価益の額は、次のとおりである(法25③、令24の2⑤)。
- ⅰ 再生計画認可の決定があったこと……その有する資産の当該決定があった時の価額とその直前の帳簿価額との差額
- ⅱ ⅰに準ずる事実……その有する資産の実態貸借対照表に計上されている価額とその事実が生じた時の直前の帳簿価額との差額
- ④ この制度は、確定申告書に評価益明細又は評価損明細の記載があり、かつ、評価益関係書類又は評価損関係書類の添付があることが適用要件とされる(法25⑤、規8の6③)。
売買目的有価証券の評価益に関しては、605頁以下の項を参照。
左記(1)の評価増をした金額を益金の額に算入されなかった資産については、その評価換えをした事業年度以後、その資産の帳簿価額は、増額がされなかったものとみなす(法25④)。
債務免除等とは、債務の免除又は債権のその債務者に対する現物出資による移転をいう(令24②三)。