税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

建設請負等による損益の計上時期の特例

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 建設請負等に係る損益の計上時期は、

  • (イ) 平成10年4月1日以後に締結した請負契約にかかる長期大規模工事には工事進行基準が適用される。
  • (ロ) その他の工事については、
    • ① 原則的には工事進行基準が適用されるがその実情により、
    • ② 引渡基準
    • ③ 部分完成基準

 を適用することも認められている。

1 部分完成基準

 請け負った建設工事等(工事進行基準の適用を受けるものを除く。)について次に掲げるような事実がある場合には、建設工事等の全部が完成しないときでも、その事業年度において引き渡した建設工事等の量又は完成した部分に区分した単位ごとにをその事業年度の益金に算入しなければならない(基通2-1-1の4)。

  • (1) 一の契約により同種の建設工事等を多量に請け負ったような場合で、その引渡量に従い工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合
  • (2) 1個の建設工事等であっても、その一部が完成し、その完成した部分を引き渡した都度その割合に応じて工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合

2 工事進行基準

〔長期大規模工事〕

  • (1) 工事(製造及びソフトウエアの開発も含まれる。)の請負のうち、長期大規模工事に該当する工事の請負については、工事進行基準の方法により各事業年度の収益の額及び費用の額を計上する(法64①、令129①)。
      長期大規模工事とは、次の要件に該当する工事をいう(法64①、令129①②)。
    • ① 工事の着手の日からその工事に係る契約において定められている目的物の引渡しの期日までの期間が1年以上であること
    • ② 請負の対価の額が10億円以上であること
        ただし、平成10年4月1日から平成13年3月31日までの間に締結したものについては150億円以上、平成13年4月1日から平成16年3月31日までの間に締結したものについては100億円以上、平成16年4月1日から平成20年3月31日までの間に締結したものについては50億円以上とされる。
    • ③ その工事に係る契約において、その請負の対価の額の2分の1以上がその工事の目的物の引渡しの期日から1年を経過する日後に支払われることが定められていないものであること
  • (2) 工事進行基準の方法は、その工事の請負金額と見積原価に工事の進行割合を乗じて算出した収益の額及び費用の額から、それぞれ既往事業年度において計上した収益の額及び費用の額を控除して当該事業年度の収益の額及び費用の額を算定する方法をいう(令129③)。
  • (3) 工事(追加工事を含む。)には着手しているが対価の額が確定していないという場合に、その工事が長期大規模工事に該当するか否かの判定と工事進行基準の方法による当該事業年度の収益の額及び費用の額の計算を行うに当たっては、事業年度終了の時の現況により見積もられる工事の原価の額をその対価の額及び(2)の工事の請負金額とみなす(収益の額と費用の額を同額で計上する。)(令129④)。
  • (4) 工事進行基準の方法による経理を行っていなかった工事が、対価の額の引上げその他の事由により着工事業年度後の事業年度において長期大規模工事に該当することとなった場合には、原則として、当該事業年度において当該事業年度終了の時における進行割合に応じた収益の額及び費用の額を計上するが、前事業年度までの各事業年度において工事進行基準の方法により計算するとした場合にその各事業年度の収益の額及び費用の額とされる金額については、当該事業年度の確定申告書にその計算に関する明細を記載した書類の添付を行うことを要件に完成引渡し時までその計上を繰り延べることができる(令129⑤⑧)。
      ただし、法人がその工事の請負に係る収益の額及び費用の額につき、工事進行基準の方法により経理した場合又はこの特例を受けなかった場合には、その経理した決算に係る事業年度又はその適用を受けなかった事業年度以後の事業年度については、この特例の適用を受けることができない(令129⑤ただし書)。
  • (5) 長期大規模工事については、工事に着手している場合であっても、事業年度終了の時点でその着手の日から6月を経過していないものや進行割合が20%未満となっているものについては、工事進行基準の方法による収益の額及び費用の額の計上を行わないことができる(令129⑥)。
      ただし、法人がその長期大規模工事の請負に係る収益の額及び費用の額につき、その確定した決算において工事進行基準の方法により経理した事業年度については、この特例の適用を受けることができない(令129⑥ただし書)。
  • (6) 長期大規模工事に着手したか否かは、その請け負った長期大規模工事を完成するために行う一連の作業のうち重要な部分の作業を開始したかどうかにより判定することとし、長期大規模工事の設計に関する作業がその長期大規模工事の重要な部分の作業に該当するかどうかは法人の選択によることとしている(令129⑦)。
  • (7) 外貨建工事の請負の対価の額は、その工事に係る契約の時における外国為替相場による円換算額とされている(令129①)が、その円換算額は、その外貨建工事の請負の対価の額を契約の日の電信売買相場の仲値により円換算した金額とする。ただし、継続適用を条件として、契約の日の電信買相場により円換算した金額とすることができる(基通2-4-20)。

備考

契約は、契約書等の書面が作成されているかどうかを問わない(基通2-4-13)。

複数の契約書により工事の請負に係る契約が締結されている場合であっても、当該契約に至った事情等からみてそれらの契約全体で一の工事を請け負ったと認められる場合には、当該工事に係る契約全体を一の契約として長期大規模工事に該当するかどうかの判定を行う(基通2-4-14)。

工事の請負に係る一の契約においてその目的物について個々に引渡しが可能な場合であっても、長期大規模工事に該当するかどうかは、当該一の契約ごとに判定する(基通2-4-15)。

契約において手形で請負の対価の額が支払われることになっている場合についても、令第129条第2項に規定する「支払われること」に含まれる(基通2-4-18)。

長期大規模工事に該当しないこととなった場合であって、工事進行基準の適用をしないこととしたときであっても、その適用しないこととした事業年度前の各事業年度において計上した当該工事の請負に係る収益の額及び費用の額を既往に遡って修正することはしない(基通2-4-16)。

長期大規模工事の着手の日の判定については、当該長期大規模工事の種類及び性質、その長期大規模工事に係る契約の内容、慣行等に応じその「重要な部分の作業」を開始した日として合理的であると認められる日のうち法人が継続して判定の基礎としている日による(基通2-4-17)。

外貨建工事の請負の対価の額が増額又は減額された場合における長期大規模工事の判定については、当該外貨建工事に係る当該増額後又は減額後の請負の対価の額を、当該外貨建工事に係る契約時の外国為替の売買相場により円換算した金額とする(基通2-4-21)。

外貨建工事の工事進行基準の計算は、例えば、当該計算の基礎となる金額につきすべて円換算後の金額に基づき計算する方法など、継続して適用する合理的な方法によるものとする(基通2-4-22)。

〔長期大規模工事以外の工事〕

  • (1) 長期大規模工事以外の工事でその目的物の引渡しが着工事業年度後の事業年度において行われるものについては、工事進行基準の方法を選択することもできる。ただし、その工事の請負に係る収益の額及び費用の額につき、着工事業年度後のいずれかの事業年度の確定した決算において工事進行基準による経理を行わなかった場合には、その翌事業年度以後はその工事について工事進行基準は適用できない(法64②)。
  • (2) 対価の額が確定していない場合の取扱い等
    • イ 長期大規模工事以外の工事でその請負の対価の額が確定していないものについて、工事進行基準の方法による収益の額及び費用の額の計算において、その事業年度終了の時の現況によりその工事につき見積もられる原価の額をその請負の対価の額とみなす(令129⑨)。ただし、下記ハの適用を受ける場合を除く。
    • ロ 長期大規模工事以外の工事について、工事に着手したかどうかの判定は、その請け負った工事の内容を完成するために行う一連の作業のうち重要な部分の作業を開始したかどうかにより判定する(令129⑩)。
    • ハ 法人の請負をした工事のうちその請負の対価の額がその着手の日に確定していないものについては、その請負の対価の額の確定の日をその工事の着手の日として法人税法第64条第2項の規定を適用することができる(令129⑪)。

備考

長期大規模工事に係る着手の判定の取扱いと同様に、その工事の設計に関する作業がその工事の重要な部分の作業に該当するかどうかは法人の選択による。

(工事進行基準による未収入金)

 法人の請負をした工事につきその着手の日からその目的物の引渡しの日の前日までの期間内の日の属する各事業年度において工事進行基準の方法を適用している場合には、その工事に係る次の①の金額から②の金額を控除した金額をその工事の請負に係る売掛債権等の帳簿価額として、その各事業年度の所得の金額を計算する(令130)。

  • ① その工事の請負に係る収益の額のうち、工事進行基準の方法によりその事業年度前の各事業年度の収益の額とされた金額及びその事業年度の収益の額とされる金額の合計額(長期大規模工事以外の工事については、工事進行基準の方法により経理しなかった決算に係る事業年度の翌事業年度以後の事業年度の収益の額を除く。)
  • ② 既にその工事の請負の対価として支払われた金額(その対価の額でまだ支払われていない金額のうち、その対価の支払を受ける権利の移転によりその法人が対価の支払を受けない金額を含む。)

備考

その工事の請負に係る売掛債権等について、貸倒れによる損失が生じたこと、資産の評価損の損金算入制度(会社更生法等の規定に従って行う評価換えに係る部分に限る。)又は連結納税の開始に伴う資産の時価評価制度の適用を受けること等の事由によりその帳簿価額を増額し、又は減額することとなる場合には、その売掛債権等の帳簿価額は、左記①の金額から②の金額を控除した金額にその増額する金額を加算し、又はその減額する金額を減算した金額とされる(規27の16の3)。

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