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所有資産(棚卸資産を除く。)が次に掲げる場合に該当することとなった場合において、収用等のあった日を含む事業年度においてその対価として取得した補償金(いわゆる対価補償金)をもって収用等により譲渡した資産と同種若しくは同効用の資産を取得(所有権移転外リース取引による取得を除き、製作及び建設を含む。以下同じ。)したときは、その代替取得資産について、収用等された資産の譲渡差益に対応する金額の範囲内で、その帳簿価額を減額して損金算入する経理(圧縮記帳)が認められる(措法64①)。
備考
圧縮記帳に代えて特定目的の積立金経理によることができる(措法64①)。
左の所有資産又は代替資産には、それぞれ、これらの資産に該当する信託の信託財産に属する資産又は信託代替資産が含まれる。
圧縮記帳の特例を受ける補償金等とは、補償金、対価又は清算金(いわゆる対価補償金)をいうが、収用に際して交付を受ける次のものは含まれない(措通64(2)-1)。①収益補償金、②経費補償金、③移転補償金、④その他対価補償金たる実質を有しない補償金
1 特例が認められる場合
備考
移築又は移設補償金であっても、ひき家補償等の名義で交付を受ける補償金又は移設困難な機械装置の補償金を対価補償金として取り扱うことができる場合がある(措通64(2)-8、9)。
他人の建物を使用している法人が、その建物を収用されたことに伴い、建物の賃借に要する権利金に充てられるものとして交付を受ける補償金は、対価補償金として課税の特例が認められる(措通64(2)-21)。
左の収用等の特例が認められる場合の(1)、(9)、(12)及び(13)の補償金とは、名義の如何を問わず、資産の収用等の対価たるものをいい、移転料その他収用等の対価以外の金額は含まない(措法64③)。
圧縮記帳及び特別勘定による経理をした場合は、原則として、確定申告書等に損金に算入される金額の記載及びその計算に関する明細書の添付があり、かつ、土地収用証明書等必要な書類を保存しなければならない(措法64④⑤、64の2⑬、措規22の3④⑤)。
その他の法令には、港湾法、鉱業法、海岸法、水道法及び電気通信事業法がある(措令39⑬)。
2 圧縮できる譲渡差益の額
圧縮記帳により損金経理をすることができる金額の限度は、次のとおりである(措法64①)。
対価補償金の額のうち代替資産の取得に充てた金額×対価補償金の額-譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額対価補償金の額
その資産の譲渡に要した経費があるときは、その額を控除した後の金額が対価補償金の額となる。
この結果、圧縮記帳をした代替資産の帳簿価額は、次のようになる。
代替資産の取得価額-圧縮限度額の範囲内で圧縮記帳した金額
備考
代替取得資産については、特別償却及び割増償却並びに高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の税額控除等の特別税額控除の適用がない(措法64⑥)。
3 特別勘定による経理
収用等に伴い代替資産を収用等のあった日を含む事業年度の翌事業年度開始の日から収用等のあった日以後2年を経過するまでの期間(取得指定期間)内に、補償金等の全部又は一部に相当する金額で代替資産を取得する見込みである場合には、代替資産の取得に充てようとする金額を基礎として、2の算式に準じて計算した金額以下の金額を特別勘定を設ける方法により損金算入する経理が認められる(措法64の2①)。
備考
取得指定期間は、収用等に係る事業の全部若しくは一部が完了しないこと又は工場等の建設に要する期間が通常2年を超えることその他やむを得ない事情があるため、収用等があった日から2年以内に代替資産の取得が困難である場合には、延長される(措令39⑲)。
特別勘定は、代替資産を取得する場合のほか、適格合併等を行い、合併法人等に引き継がれる場合を除いて、次の場合に、益金に算入しなければならない(措法64の2⑫)。①代替資産の取得以外に取り崩した場合、②指定期間を経過する場合、③指定期間内に解散した場合、④指定期間内に当該法人を被合併法人とする非適格合併を行った場合
4 資産を取得した場合の圧縮記帳
特別勘定を設けている法人が、その後代替資産を取得した場合には、圧縮記帳が認められ、取得価額と記帳価額の差額は損金に算入されるが、一方特別勘定として経理した金額のうち、圧縮記帳による損金算入額と同額が代替資産を取得した事業年度の益金に算入される(措法64の2⑦⑨)。
5 非適格株式交換等を行った場合の特別勘定の益金算入
収用等に伴い特別勘定を設けている法人が、自己を株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人とする非適格株式交換等を行った場合に、その直前における特別勘定の金額は、益金の額に算入する(措法64の2⑪)。ただし、特別勘定の金額が1,000万円未満である場合には、この措置は適用されない(措法64の2⑪、措令39○27)。
6 代替資産を取得しない場合の課税と特別控除
特別勘定を設けている法人が、指定期間内に代替資産を取得しなかった場合には、特別勘定の金額はその指定期間の末日を含む事業年度に取り崩して益金に算入しなければならない。この場合、収用等による資産の譲渡が後に述べる特別控除の適用を受ける全ての要件に該当しており、その収用等によって代替資産を取得せず圧縮記帳の適用を受けなかった場合には、特別勘定の金額のうち5,000万円までの金額は、損金に算入することができる(措法65の2⑦)。
備考
左の損金算入額は、特定同族会社の留保所得金額の計算については、所得に含まれる(措法65の2⑨)。
7 収用等の場合の圧縮記帳の特例と特別控除との関係
圧縮記帳の特例と5,000万円特別控除との適用関係は次のとおりである(措通65の2-1)。
(1) 措法第65条第1項第3号から第6号に掲げる場合に該当する資産の譲渡をした場合においてその譲渡した資産のうち、換地処分等により取得するこれらの号に規定する資産に対応する部分 | ― | 圧縮記帳の特例(措法65①⑦⑧⑨) | ||||||||
(2) 収用換地等により譲渡した資産のうち(1)以外のもの | ― | 法人の選択により | { | A その事業年度のうち同一の年中に収用換地等により譲渡した全ての資産((1)に該当するものを除く。)について圧縮記帳等の特例の適用を受けない場合 | { | 5,000万円損金算入の特例の適用が受けられる要件を満している資産 | ― | 5,000万円損金算入の特例(措法65の2) | ||
その他の資産 | ― | 特例の適用なし | ||||||||
B その事業年度のうち同一の年中に収用換地等により譲渡した資産((1)に該当するものを除く。)の全部又は一部について圧縮記帳等の特例の適用を受ける場合 | { | 収用換地等により取得した補償金等 | { | 代替資産を取得し圧縮記帳等の特例を選択した部分 | ― | 圧縮記帳等の特例(措法64、64の2、65③) | ||||
その他の部分 | ― | 特例の適用なし | ||||||||
換地処分等による交換取得資産 | ― | 圧縮記帳の特例(措法65①) |