税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等

この解説は最終更新日から1年以上経過しており、現行法令に準拠していない可能性があります。

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(1) 資産調整勘定

 内国法人が非適格合併等によりその非適格合併等に係る被合併法人、分割法人、現物出資法人又は譲受けに係る移転法人(以下「被合併法人等」という。)から資産又は負債の移転を受けた場合において、その内国法人が非適格合併等により交付した非適格合併等対価額(内国法人が非適格合併等により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額をいう。)がその移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額を超えるときは、その超える部分の金額(その資産の取得価額の合計額がその負債の額の合計額に満たない場合には、その満たない部分の金額を加算した金額)のうち一定の金額は、資産調整勘定の金額とする(法62の8①)。

備考

非適格合併等とは、次に掲げるものをいう(法62の8①、令123の10①)。

  • ① 非適格合併
  • ② 適格分割又は適格現物出資に該当しない分割、現物出資又は事業の譲受け(以下「非適格分割等」という。)のうち、その非適格分割等に係る分割法人、現物出資法人又は移転法人のその非適格分割等の直前において行う事業及びその事業に係る主要な資産又は負債のおおむね全部がその非適格分割等によりその非適格分割等に係る分割承継法人、被現物出資法人又は譲受け法人に移転をするもの

(2) 資産調整勘定の取崩し

 資産調整勘定を有する内国法人は、各資産調整勘定の金額に係る当初計上額(非適格合併等の時に資産調整勘定の金額とするものとされた金額をいう。)を60で除して計算した金額に当該事業年度の月数(当該事業年度が当該資産調整勘定の金額に係る非適格合併等の日の属する事業年度である場合には、同日から当該事業年度終了の日までの期間の月数)を乗じて計算した金額に相当する金額を、当該事業年度において減額しなければならず(法62の8④)、その減額すべきこととなった資産調整勘定の金額に相当する金額は、その減額すべきこととなった日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する(法62の8⑤)。

備考

資産調整勘定の金額又は負債調整勘定の金額を有する内国法人は、その有することとなった事業年度及びこれらの金額を減額する事業年度の確定申告書に、その有することとなった金額の計算に関する明細書又は損金の額若しくは益金の額に算入される金額の計算に関する明細書を添付しなければならない(令123の10⑨)。

(3) 退職給与負債調整勘定

 内国法人が非適格合併等によりその非適格合併等に係る被合併法人等から資産又は負債の移転を受けた場合において、非適格合併等に伴い被合併法人等から引継ぎを受けた従業者につき退職給与債務引受け(非適格合併等後の退職その他の事由によりその非適格合併等に伴い引継ぎを受けた従業者に支給する退職給与の額につき、非適格合併等前における在職期間その他の勤務実績等を勘案して算定する旨を約し、かつ、これに伴う負担の引受けをすることをいう。)をした場合には、退職給与債務引受額を負債調整勘定の金額とする(法62の8②一)。

備考

退職給与債務引受額とは、非適格合併等の時における従業者に係る退職給付引当金の額(一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って算定され、かつ、その額につき明細書に記載がある場合の退職給付引当金の額に限る。)に相当する金額をいう(令123の10⑦)。

(4) 短期重要負債調整勘定

 内国法人が非適格合併等によりその非適格合併等に係る被合併法人等から資産又は負債の移転を受けた場合において、非適格合併等により被合併法人等から移転を受けた事業に係る将来の債務(その事業の利益に重大な影響を与えるものに限るものとし、退職給与債務引受けに係るもの及び既にその履行をすべきことが確定しているものを除く。)で、その履行が非適格合併等の日からおおむね3年以内に見込まれるものについて、その内国法人がその履行に係る負担の引受けをした場合には、短期重要債務見込額を負債調整勘定の金額とする(法62の8②二)。

備考

短期重要債務見込額とは、その移転を受けた事業に係る将来の債務の額(債務の額に相当する金額としてその事業につき生ずるおそれのある損失の額として見込まれる金額がその移転を受けた資産の取得価額の合計額の20%に相当する金額を超える場合におけるその債務の額に限る。)に相当する金額をいう(令123の10⑧)。

(5) 差額負債調整勘定

 内国法人が非適格合併等により当該非適格合併等に係る被合併法人等から資産又は負債の移転を受けた場合において、非適格合併等に係る非適格合併等対価額がその被合併法人等から移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額に満たないときは、その満たない部分の金額は、負債調整勘定の金額とする(法62の8③)。

(6) 負債調整勘定の取崩し

 (3)の退職給与負債調整勘定又は(4)の短期重要負債調整勘定の金額を有する内国法人は、次に掲げる場合に該当する場合には、その負債調整勘定の金額につき、その該当することとなった日の属する事業年度において次に定める金額を減額しなければならない(法62の8⑥)。

  • ① 退職給与引受従業者(退職給与債務引受けの対象とされた従業者をいう。)が退職その他の事由により当該内国法人の従業者でなくなった場合(退職給与引受従業者が一定の場合に該当する場合を除く。)又は退職給与引受従業者に対して退職給与を支給する場合…退職給与債務引受額に係る負債調整勘定の金額のうちこれらの退職給与引受従業者に係る部分の金額として一定の金額
  • ② 短期重要債務見込額に係る損失が生じ、若しくは非適格合併等の日から3年が経過した場合又は自己を被合併法人とする合併(適格合併を除く。)を行う場合若しくはその残余財産が確定した場合…短期重要債務見込額に係る負債調整勘定の金額のうち損失の額に相当する金額(3年が経過した場合又は合併を行う場合若しくは残余財産が確定した場合にあっては、その短期重要負債調整勘定の金額)

 (5)の差額負債調整勘定の金額を有する内国法人は、各差額負債調整勘定の金額に係る当初計上額(非適格合併等の時に差額負債調整勘定の金額とするものとされた金額をいう。)を60で除して計算した金額に当該事業年度の月数(当該事業年度が当該差額負債調整勘定の金額に係る非適格合併等の日の属する事業年度である場合には、同日から当該事業年度終了の日までの期間の月数)を乗じて計算した金額に相当する金額を、当該事業年度において減額しなければならない(法62の8⑦)。

 これらの減額すべきこととなった負債調整勘定の金額に相当する金額は、その減額すべきこととなった日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する(法62の8⑧)。

 また、内国法人が、非適格合併等により被合併法人等から資産又は負債の移転を受けた場合において、次に掲げる場合に該当するときは、その非適格合併等に係る資産調整勘定の金額及び負債調整勘定の金額については一定の計算を行う(令123の10⑮⑯)。

  • ① その被合併法人等の株主等が特定報酬株式を有していた場合
  • ② その内国法人の株式その他の資産を交付しなかった場合

備考

左記の「特定報酬株式」とは、役務の提供の対価として被合併法人等により交付されたその被合併法人等の株式(出資を含むものとし、その役務の提供後に交付されたものを除く。)のうち、その株式と引換えに給付された債権がない場合におけるその株式をいう(令123の10⑮)。

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