税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

医療法人の持分についての相続税の納税猶予及び免除

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 個人が、経過措置医療法人の持分を有していた被相続人から相続又は遺贈により経過措置医療法人の持分を取得した場合において、経過措置医療法人が相続税の申告書の提出期限において認定医療法人(平成26年改正医療法施行日から令和5年9月30日までの間に厚生労働大臣認定を受けた医療法人に限る。)であるときは、持分を取得した相続人等が相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、持分の価額に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供した場合に限り、認定移行計画に記載された移行期限まで、その納税を猶予する(措法70の7の12①)。

(注)1 「経過措置医療法人」とは、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(平成18年法律第84号)附則第10条の2に規定する経過措置医療法人をいう。

  2 「認定医療法人」とは、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号)附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日(平成26年10月1日)から令和5年9月30日までの間に、持分の定めのない医療法人に移行する計画を作成し、その計画について厚生労働大臣の認定を受けた医療法人をいう。

  3 「移行期限」とは、認定移行計画に記載された持分の定めのない医療法人に移行する期限をいい、認定の日から3年以内とされている。

備考

この特例は、相続人等が、相続の開始の時から相続税の申告書の提出期限までの間に、経過措置医療法人の持分に基づき出資額に応じた払戻しを受けた場合若しくは持分の譲渡をした場合又は「医療法人の持分についての相続税の税額控除」の適用を受ける場合には、適用されない(措法70の7の12③)。

相続税の申告書の提出期限までに、相続又は遺贈により取得した経過措置医療法人の持分の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない場合におけるその分割されていない持分については、この特例の適用を受けることができない(措法70の7の12④)。

猶予税額及び納付税額の計算

 相続人等の納税猶予分の相続税額及び納付税額の計算は以下のとおりである(措法70の7の12②、措令40の8の12④~⑪)。

  • ① 通常の相続税額の計算を行い、持分を取得した相続人等の相続税額を算出。
  • ② 持分を取得した相続人等以外の者の取得財産は不変とした上で、その相続人等が持分のみを相続したものとして相続税額の計算を行い、その相続人等の相続税額を算出し、その金額が猶予税額となる。
  • ③ 上記①の相続税額から上記②の猶予税額を控除した金額が持分を取得した相続人の納付税額となる。

納税猶予が打ち切られる場合

  • (1) 納税猶予税額の全部確定
     この特例の適用を受ける相続人等又はこの特例の適用に係る認定医療法人について、次のいずれかに掲げる場合に該当することとなった場合には、それぞれに掲げる日から2月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(措法70の7の12⑤、70の7の9⑤)。
    • ① 相続人等が相続税の申告書の提出期限から認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までの間に認定医療法人の持分に基づき出資額に応じた払戻しを受けた場合 その払戻しを受けた日
    • ② 相続人等が相続税の申告書の提出期限から認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までの間に認定医療法人の持分の譲渡をした場合 その譲渡をした日
    • ③ 移行期限までに新医療法人への移行をしなかった場合 その移行期限
    • ④ 認定移行計画の認定が取り消された場合 その取り消された日
    • ⑤ 認定医療法人が解散をした場合(合併により消滅をする場合を除く。) その解散をした日
    • ⑥ 認定医療法人が合併により消滅した場合 その消滅した日

    (注) 次の場合には、納税猶予は継続される。
    • イ 合併により医療法人を設立する場合において相続人等が持分に代わる金銭その他の財産の交付を受けないとき
    • ロ 合併後存続する医療法人がその合併により新医療法人となる場合において受贈者が持分に代わる金銭その他の財産の交付を受けないとき
  • (2) 納税猶予税額の一部確定
     この特例の適用に係る認定医療法人が基金拠出型医療法人への移行をする場合において、相続人等が有するその認定医療法人の持分の一部を放棄し、その残余の部分を基金拠出型医療法人の基金として拠出したときは、その相続人等の納税猶予分の相続税額のうちその基金として拠出した額に対応する部分の金額に相当する相続税については、その基金拠出型医療法人への移行に関する都道府県知事の認可があった日から2月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(措法70の7の12⑥、70の7の9⑥)。

納税猶予税額の免除

 この特例の適用に係る認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までに、次の①又は②のいずれかに掲げる場合に該当することとなった場合には、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれに掲げる金額に相当する相続税は、免除される(措法70の7の12⑪、70の7の9⑪)。

  • ① この特例の適用を受ける相続人等が有しているこの特例の適用に係る認定医療法人の持分の全てを放棄した場合 納税猶予分の相続税額
  • ② 認定医療法人が基金拠出型医療法人への移行をする場合において、この特例の適用を受ける相続人等が有しているその認定医療法人の持分の一部を放棄し、その残余の部分をその基金拠出型医療法人の基金として拠出したとき 納税猶予分の相続税額から基金として拠出した額に対応する部分の金額に相当する相続税額を控除した残額

備考

左の①又は②のいずれかに掲げる場合に該当することとなったことを証する書類を添付した届出書を、その該当することとなった日後遅滞なく、相続税の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(措令40の8の12⑮、40の8の9⑪)。

利子税の納付

 この特例の適用を受ける相続人等は、納税猶予の打ち切りがあり、猶予税額を納付する場合には、その納付する相続税額を基礎とし、相続税の申告書の提出期限の翌日から納税の猶予に係る期限までの期間に応じ、年6.6パーセントの割合を乗じて計算した金額に相当する利子税を、併せて納付しなければならない(措法70の7の12⑫、70の7の9⑫)。

備考

左の利子税の割合には、特例が設けられている(措法93)。

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