税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例

この解説は最終更新日から1年以上経過しており、現行法令に準拠していない可能性があります。

税務研究会お試し

 特例経営承継相続人等が、特例認定承継会社の代表権を有していた者から相続等により当該特例認定承継会社の非上場株式等を取得した場合には、その取得した全ての非上場株式等に係る課税価格に対応する相続税の全額について、その特例経営承継相続人等の死亡の日等までその納税を猶予する(措法70の7の6①)。

 なお、特例経営承継相続人等は、円滑化法の特例認定の有効期間(5年間)内は毎年、その後は3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければならない(措法70の7の6⑦、措令40の8の6○27)。

 また、当該相続に係る相続税の申告書の提出期限までに、共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない非上場株式等については、この特例の適用を受けることができない(措法70の7の6⑤)。

(注) この特例は、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの間の相続等に係る相続税について適用される。また、この特例の適用を受けるためには、平成30年4月1日から令和5年3月31日までの間に特例承継計画を都道府県に提出し、円滑化法の認定を受ける必要がある。

備考

 措法70の7の7①により贈与者から相続により取得したものとみなされた特例対象受贈非上場株式等について、相続税の納税猶予の適用を受けようとする者は、当該相続に係る相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、特例対象相続非上場株式等に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、当該相続税の申告書の提出期限までに一定の担保を提供した場合に限り、特例経営相続承継受贈者の死亡の日まで、その納税が猶予される(措法70の7の8①)。

特例経営承継相続人等の範囲

 この特例の適用を受けることができる特例経営承継相続人等とは、特例認定承継会社の特例承継計画に記載された当該特例認定承継会社の代表権を有する後継者(同族関係者と合わせて当該特例認定承継会社の総議決権数の過半数を有する者に限る。)であって、当該同族関係者のうち、当該特例認定承継会社の議決権を最も多く有する者(当該特例承継計画に記載された当該後継者が2名又は3名以上の場合には、当該議決権数において、それぞれ上記2名又は3名の者(当該総議決権数の10%以上を有する者に限る。))をいう(措法70の7の6②七、措令40の8の6⑭)。

備考

「特例承継計画」とは、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画であって、当該特例認定承継会社の後継者、承継時までの経営見通し等が記載されたものをいう(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則16一)。

被相続人の範囲

 次の(1)又は(2)の場合に応じそれぞれに定める者である(措令40の8の6①)。

  • (1) (2)に掲げる場合以外の場合 相続の開始前に特例認定承継会社の代表権を有していた個人で、当該相続の開始の直前(当該個人が当該相続の開始の直前において当該特例認定承継会社の代表権を有しない場合には、当該個人が当該代表権を有していた期間内のいずれかの時及び当該相続の開始の直前。以下同じ。)において、次に掲げる要件の全てを満たすものをいう。
    • イ 「B/A>50/100」の算式を満たすこと
    • ロ 当該被相続人が有する当該特例認定承継会社の非上場株式等に係る議決権の数が当該被相続人の同族関係者等のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと
  • (2) 納税猶予の適用を受けようとする者が当該特例認定承継会社の非上場株式等について既に贈与税又は相続税の納税猶予を受けている場合 特例認定承継会社の非上場株式等を有していた個人

備考

A:当該特例認定承継会社に係る総株主議決権数

B:当該被相続人及び当該被相続人の同族関係者等の有する当該特例認定承継会社の非上場株式等の議決権の数の合計

特例認定承継会社の範囲

 円滑化法第2条に規定する中小企業者のうち、円滑化法第12条第1項第1号の円滑化法認定を受けた会社で、相続開始の時において、次に掲げる要件の全てを満たすものをいう(措法70の6の6②一、措令40の8の6⑥~⑨)。

  • (1) 当該会社の常時使用従業員の数が1人以上であること
  • (2) 当該会社が、原則として資産保有型会社又は資産運用型会社に該当しないこと
  • (3) 当該会社及び当該会社の特定特別関係会社(特別関係会社(同族関係者と合わせて他の会社に係る総株主議決権数の50%超を保有する場合における当該他の会社をいう。)のうち当該会社と密接な関係を有する会社をいう。)の株式等が非上場株式等に該当すること
  • (4) 当該会社及び当該会社の特定特別関係会社が性風俗関連特殊営業を営む会社に該当しないこと
  • (5) 当該会社の特別関係会社が外国会社である場合には、当該会社の常時使用従業員の数が5人以上であること
  • (6) 円滑化法認定を受けた会社の相続の開始の日の属する事業年度の直前の事業年度における総収入金額が、零を超えること
  • (7) 円滑化法認定を受けた会社が発行する黄金株を当該会社に係る特例経営承継相続人等以外の者が有していないこと
  • (8) 円滑化法認定を受けた会社の特定特別関係会社が、中小企業者に該当すること

備考

「資産保有型会社」、「資産運用型会社」、「総収入金額」及び「特定特別関係会社」の意義については、871頁参照。

納税猶予分の相続税額の計算

 特例対象非上場株式等の価額を特例経営承継相続人等に係る課税価格とみなして計算した当該特例経営承継相続人等の相続税の額をいう(措法70の7の6②八、措令40の8の6⑮)。

備考

左の計算において、特例認定承継会社又は当該特例認定承継会社の特別関係会社が外国会社等に該当する場合には、当該特例認定承継会社が当該外国会社等の株式等を有していなかったものとして計算した価額が特例経営承継相続人等に係る相続税の課税価格とみなされる(措法70の7の6②八)。

納税猶予税額の免除

 この特例の適用を受ける特例経営承継相続人等又は当該特例経営承継相続人等に係る特例認定承継会社が次のいずれかに掲げる場合に該当することとなった場合には免除される(措法70の7の6⑫、措令40の8の6○28)。

  • ① 当該特例経営承継相続人等が死亡した場合
  • ② 特例経営承継期間の末日の翌日(特例経営承継期間内にやむを得ない理由により特例認定承継会社の代表権を有しないこととなった場合には、その有しないこととなった日)以後に、当該特例経営承継相続人等が当該特例対象非上場株式等につき措法70の7①又は70の7の5①の規定の適用に係る贈与をした場合

 また、特例認定承継会社について破産手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合などに該当することとなったときには、一定の納税猶予税額が税務署長の通知により免除される(措法70の7の6⑫、措令40の8の6○28)。

備考

民事再生計画の認可決定等があった場合には、その時点における株式等の価額に基づき納税猶予税額を再計算することとし、差額については免除される(措法70の7の6○21)。

納税猶予の打ち切り

  • 1 特例経営承継期間内
      この特例の適用を受ける特例経営承継相続人等又は特例対象非上場株式等に係る特例認定承継会社について次に掲げる場合などに該当することとなったときには、それぞれ次に定める日から2月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(措法70の7の6③、措令40の8の6○25)。
    • (1) 当該特例経営承継相続人等が特例認定承継会社の代表権を有しないこととなった場合(一定のやむを得ない理由がある場合を除く。) その有しないこととなった日
    • (2) 「B/A≦50/100」の算式を満たすこととなった場合 当該満たすこととなった日
    • (3) 当該特例経営承継相続人等と同族関係等のある者のうちいずれかの者が、当該特例経営承継相続人等が有する当該特例認定承継会社に非上場株式等に係る議決権の数を超える数の議決権を有することとなった場合 その有することとなった日
    • (4) 当該特例経営承継相続人等が当該特例対象非上場株式等の一部の譲渡等をした場合 当該譲渡等をした日
  • 2 特例経営承継期間後
      特例経営承継期間の末日の翌日から猶予中相続税額に相当する相続税の全部につき納税の猶予に係る期限が確定するまでの間において、この特例の適用を受ける特例経営承継相続人等が当該特例対象非上場株式等の一部の譲渡等をした場合などに該当することとなったときには、猶予中相続税額のうち、当該特例対象非上場株式等の数又は金額に対応する部分の額として計算した金額などについては、当該譲渡等をした日などから2月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(措法70の7の6③、措令40の8の6○25)。

備考

A:当該特例認定承継会社に係る総株主議決権数

B:特例経営承継相続人等及びその同族関係者等の有する当該特例認定承継会社の非上場株式等の議決権の数の合計

雇用確保要件の緩和措置

 この特例の適用を受ける者は雇用確保要件(措法70の7の2③二)を満たさない場合であっても、納税猶予の期限は確定しないこととされている(措法70の7の6③)。ただし、その場合には、その満たせない理由を記載した書類(認定経営革新等支援機関の意見が記載されているものに限る。)を都道府県に提出しなければならない。なお、その理由が、経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められない場合には、特例認定承継会社は、認定経営革新等支援機関から指導及び助言を受けて、当該書類にその内容を記載しなければならない(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則20)。

経営環境変化に対応した減免措置

 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特例経営承継期間経過後に、特例認定承継会社の非上場株式等の譲渡をするとき等には、次のとおり納税猶予税額が免除される(措法70の7の6⑬~⑯)。

  • (1) 特例認定承継会社に係る非上場株式等の譲渡等の対価の額(当該譲渡等の時価の50%が下限)を基に再計算した相続税額と譲渡等の前5年間に特例経営承継相続人等及びその同族関係者に対して支払われた直前配当等の額との合計額を納付することとし、当該再計算した相続税額と直前配当等の額との合計額が当初の納税猶予税額を下回る場合には、その差額は免除される。
  • (2) 特例認定承継会社の非上場株式等を当該譲渡等の時価の50%以下で譲渡等をする場合において、次の(3)の適用を受けようとするときには、上記(1)の再計算した相続税額と直前配当等の額との合計額については、担保の提供を条件に納税猶予が継続される。
  • (3) 上記(2)の場合において、その譲渡等後2年を経過する日において、譲渡後の特例認定承継会社等の事業が継続しており、かつ、当該特例認定承継会社等においてその譲渡等の時の従業員の半数以上が雇用されているときには、実際の譲渡等の対価の額を基に再々計算された相続税額と直前配当等の額との合計額を納付することとし、その再々計算された相続税額と直前配当等の額との合計額が上記(2)により納税が猶予されている額を下回る場合には、その差額が免除される。

備考

「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」とは、直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社が赤字である場合など一定の場合をいう(措令40の8の6○29)。

災害等を受けた場合の要件の緩和

 特例認定承継会社が次に掲げる場合に該当することとなった場合には、期限確定事由に係る雇用確保要件若しくは資産管理会社非該当要件の緩和、特例経営承継期間内に破産手続開始の決定があった場合等における猶予税額の免除又は特例認定承継会社要件等に係る事前役員就任要件若しくは資産管理会社非該当要件の緩和の特例の適用を受けることができる(措法70の7の6○26)。

  • ① 特例認定承継会社の事業の用に供する資産が災害によって甚大な被害を受けた場合
  • ② 特例認定承継会社の事業所が災害によって被害を受けたことにより当該特例認定承継会社における雇用の確保が困難となった場合
  • ③ 中小企業信用保険法に規定する一定の災害等により特例認定承継会社の売上金額が大幅に減少した場合

利子税の納付

 この特例の適用を受けた特例経営承継相続人等は、納税猶予税額の全部又は一部を納付する場合には、納付する税額を基礎とし、相続税の申告書の提出期限の翌日から納税猶予の期限までの期間に応じ、年3.6パーセントの割合を乗じて計算した金額に相当する利子税を納付しなければならない(措法70の7の6○23)。

備考

特例経営承継期間の末日の翌日以後に納税猶予税額を納付する場合には、当該特例経営承継期間中の利子税は免除される。

  • 税務通信

     

    経営財務