税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除

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 経営承継相続人等が、相続等により、認定承継会社の議決権株式等を取得した場合には、その経営承継相続人等が納付すべき相続税額のうち、その議決権株式等(相続開始前から既に保有していた議決権株式等を含めて、その認定承継会社の発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分に限る。以下「対象非上場株式等」という。)に係る課税価格の80%に対応する相続税額については、その経営承継相続人等の死亡等の日までその納税を猶予する(措法70の7の2①)。

 なお、経営承継相続人等は、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」という。)の認定の有効期間(5年間)内は毎年、その後は3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければならない(措法70の7の2⑩、措令40の8の2○42)。

 また、当該相続等に係る相続税の申告書の提出期限までに、共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない非上場株式等は、この特例の適用を受けることができない(措法70の7の2⑦)。

備考

措法70の7の3①により贈与者から相続により取得したものとみなされた対象受贈非上場株式等について、相続税の納税猶予の適用を受けようとする者は、当該相続に係る相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、対象相続非上場株式等に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、当該相続税の申告書の提出期限までに一定の担保を提供した場合に限り、経営相続承継受贈者の死亡の日まで、その納税が猶予される(措法70の7の4①)。

経営承継相続人等の範囲

 この特例の適用を受けることができる経営承継相続人等とは、被相続人から相続又は遺贈により認定承継会社の非上場株式等の取得をした個人で、次に掲げる要件の全てを満たす者(その者が2人以上ある場合は、当該認定承継会社が定めた一の者に限る。)をいう(措法70の7の2②三、措令40の8の2⑪)。

  • (1) 当該相続開始の直前において、当該会社の役員であったこと
  • (2) 当該相続開始の日の翌日から5月を経過する日において、当該認定承継会社の代表権を有していること
  • (3) 当該相続開始の時において、
    •  ① 「B/A>50/100」の算式を満たすこと
    •  ② 当該個人が有する当該認定承継会社の非上場株式等に係る議決権の数が、当該個人の同族関係者等のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと
  • (4) 当該個人が、当該相続開始の時から当該相続に係る相続税の申告書の提出期限まで引き続き当該相続又は遺贈により取得をした当該認定承継会社の対象非上場株式等の全てを有していること
  • (5) 当該個人が当該認定承継会社の非上場株式等について非上場株式等についての納税猶予及び免除の特例(措法70の7の5①、70の7の6①又は70の7の8①)の適用を受けていないこと

備考

A:当該認定承継会社に係る総株主等議決権数(総株主又は総社員の議決権の数をいう。以下同じ。)

B:当該個人及び当該個人の同族関係者等の有する当該認定承継会社の非上場株式等の議決権の数の合計

被相続人の範囲

 次の(1)又は(2)の場合に応じそれぞれに定める者である(措令40の8の2①)。

  • (1) (2)に掲げる場合以外の場合 相続の開始前に認定承継会社の代表権を有していた個人で、当該相続の開始の直前(当該個人が当該相続の開始の直前において当該認定承継会社の代表権を有しない場合には、当該個人が当該代表権を有していた期間内のいずれかの時及び当該相続の開始の直前。以下同じ。)において、次に掲げる要件の全てを満たすもの
    • イ 「B/A>50/100」の算式を満たすこと
    • ロ 当該被相続人が有する当該認定承継会社の非上場株式等に係る議決権の数が当該被相続人の同族関係者等のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと
  • (2) 納税猶予の適用を受けようとする者が当該認定承継会社の非上場株式等について既に贈与税又は相続税の納税猶予を受けている場合 認定承継会社の非上場株式等を有していた個人

備考

A:当該認定承継会社に係る総株主議決権数

B:当該被相続人及び当該被相続人の同族関係者等の有する当該認定承継会社の非上場株式等の議決権の数の合計

認定承継会社の範囲

 円滑化法第2条に規定する中小企業者(以下「中小企業者」という。)のうち、円滑化法第12条第1項第1号の円滑化法認定を受けた会社で、相続開始の時において、次に掲げる要件の全てを満たすものをいう(措法70の7の2②、措令40の8の2⑦~⑩)。

  • (1) 当該会社の常時使用従業員の数が1人以上であること
  • (2) 当該会社が、原則として資産保有型会社又は資産運用型会社に該当しないこと
  • (3) 当該会社及び当該会社の特定特別関係会社(特別関係会社(同族関係者と合わせて他の会社に係る総株主等議決権数の50%超を保有する場合における当該他の会社をいう。)のうち当該会社と密接な関係を有する会社をいう。)の株式等が非上場株式等に該当すること
  • (4) 当該会社及び当該会社の特定特別関係会社が性風俗関連特殊営業を営む会社に該当しないこと
  • (5) 当該会社の特別関係会社が外国会社である場合には、当該会社の常時使用従業員の数が5人以上であること
  • (6) 円滑化法認定を受けた会社の相続の開始の日の属する事業年度の直前の事業年度における総収入金額が、零を超えること
  • (7) 円滑化法認定を受けた会社が発行する黄金株を当該会社に係る経営承継相続人等以外の者が有していないこと
  • (8) 円滑化法認定を受けた会社の特定特別関係会社が、中小企業者に該当すること

備考

「資産保有型会社」とは、納税猶予期間中のいずれかの日において、総資産に占める特定資産(有価証券、不動産、預貯金、ゴルフ会員権、貴金属等をいう。)の合計額の割合が70%以上の会社をいう(措法70の7の2②八、措令40の8の2○24~○26)。

 「資産運用型会社」とは、納税猶予期間中のいずれかの事業年度において、総収入金額に占める特定資産の運用収入の合計額の割合が75%以上の会社をいう(措法70の7の2②九、措令40の8の2○24~○27)。

 上記の「総収入金額」からは営業外収益及び特別利益は除かれる。

「特定特別関係会社」とは、特別関係会社のうち、次に掲げる者により、その株式等の過半数を保有される会社をいう(措令40の8の2⑨)。

  • ① 認定会社
  • ② 認定会社の代表者
  • ③ ②と生計を一にする親族
  • ④ ②と事実上婚姻関係にある者など特別の関係がある者

納税猶予分の相続税額の計算

 次の(1)に掲げる金額から(2)に掲げる金額を控除した残額が納税猶予分の相続税額となる(措法70の7の2②五、措令40の8の2⑬~⑮)。

  • (1) 経営承継相続人等以外の相続人の取得財産は不変とした上で、経営承継相続人等が、通常の課税価格による対象非上場株式等のみを相続するものとして計算した場合の経営承継相続人等の相続税額
  • (2) 経営承継相続人等以外の相続人の取得財産は不変とした上で、経営承継相続人等が、課税価格を20%に減額した対象非上場株式等のみを相続するものとして計算した場合の経営承継相続人の相続税額

備考

左の(1)及び(2)の計算において、認定承継会社又は当該認定承継会社の特別関係会社が外国会社若しくは一定の医療法人の株式等を有するとき又は上場会社の発行済株式等の3%以上を有するときには、当該認定承継会社等が当該外国会社若しくは医療法人又は当該上場会社の株式等を有していなかったものとして計算した価額が経営承継相続人等に係る相続税の課税価格とみなされる(措法70の7の2②五)。

納税猶予税額の免除

 この特例の適用を受ける経営承継相続人等又は当該経営承継相続人等に係る認定承継会社が次のいずれかに掲げる場合に該当することとなった場合には免除される(措法70の7の2⑯)。

  • ① 当該経営承継相続人等が死亡した場合
  • ② 経営承継期間の末日の翌日(経営承継期間内にやむを得ない事由により認定承継会社の代表権を有しないこととなった場合には、その有しないこととなった日)以後に、当該経営承継相続人等が当該対象非上場株式等につき措法70の7①又は70の7の5①の規定の適用に係る贈与をした場合

 また、認定承継会社について破産手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合などに該当することとなったときには、一定の納税猶予税額が税務署長の通知により免除される(措法70の7の2⑰⑱、措令40の8の2○45~○47)。

備考

民事再生計画の認可決定等があった場合には、その時点における株式等の価額に基づき納税猶予税額を再計算することとし、差額については免除される(措法70の7の2○22~○26)。

納税猶予の打ち切り

  • 1 経営承継期間内
     この特例の適用を受ける経営承継相続人等又は対象非上場株式等に係る認定承継会社について次に掲げる場合などに該当することとなったときには、それぞれ次に定める日から2月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(措法70の7の2③)。
    • (1) 当該経営承継相続人等が認定承継会社の代表権を有しないこととなった場合(一定のやむを得ない理由がある場合を除く。) その有しないこととなった日
    • (2) 経営承継期間内の第1種基準日における認定承継会社の常時使用従業員の数の平均が相続の開始の時における常時使用従業員の数の80%を下回る数となった場合 経営承継期間の末日
    • (3) 「B/A≦50/100」の算式を満たすこととなった場合 当該満たすこととなった日
    • (4) 当該経営承継相続人等と同族関係等のある者のうちいずれかの者が、当該経営承継相続人等が有する当該認定承継会社の非上場株式等に係る議決権の数を超える数の議決権を有することとなった場合 その有することとなった日
    • (5) 当該経営承継相続人等が当該対象非上場株式等の一部の譲渡等をした場合 当該譲渡等をした日
  • 2 経営承継期間後
     経営承継期間の末日の翌日から猶予中相続税額に相当する相続税の全部につき納税の猶予に係る期限が確定するまでの間において、この特例の適用を受ける経営承継相続人等が当該対象非上場株式等の一部の譲渡等をした場合などに該当することとなったときには、猶予中相続税額のうち、当該譲渡等をした対象非上場株式等の数又は金額に対応する部分の額として計算した金額などについては、当該譲渡等をした日などから2月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(措法70の7の2⑤)。

備考

「第1種基準日」とは、経営承継期間(認定承継会社の非上場株式等について最初の相続税又は贈与税の納税猶予の適用に係る申告期限の翌日から5年を経過する日)内のいずれかの日で、当該申告期限の翌日から起算して1年を経過するごとの日をいう(措法70の7の2②七イ)。

左の(2)に該当した場合に納付すべき納税猶予税額については、延納又は物納の申請を行うことができる。

A:当該認定承継会社に係る総株主等議決権数

B:経営承継相続人等及び当該経営承継相続人等の同族関係者等の有する議決権の数(当該認定承継会社に係るものに限る。)の合計

災害等を受けた場合の要件の緩和

 認定承継会社等が次に掲げる場合に該当することとなった場合には、期限確定事由に係る雇用確保要件若しくは資産管理会社非該当要件の緩和、経営承継期間内に破産手続開始の決定があった場合等における猶予税額の免除又は認定会社要件等に係る事前役員就任要件若しくは資産管理会社非該当要件の緩和の特例の適用を受けることができる。

  • ① 認定承継会社等の事業の用に供する資産が災害によって甚大な被害を受けた場合
  • ② 認定承継会社等の事業所が災害によって被害を受けたことにより当該認定承継会社等における雇用の確保が困難となった場合
  • ③ 中小企業信用保険法に規定する一定の災害等により認定承継会社等の売上金額が大幅に減少した場合

利子税の納付

 この特例の適用を受けた経営承継相続人等は、納税猶予税額の全部又は一部を納付する場合には、納付する税額を基礎とし、相続税の申告書の提出期限の翌日から納税の猶予期限までの期間に応じ、年3.6パーセントの割合を乗じて計算した金額に相当する利子税を、納付しなければならない(措法70の7の2○28)。

備考

経営承継期間の末日の翌日以後に納税猶予税額を納付する場合には、当該経営承継期間中の利子税は免除される。

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