税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

農地等についての相続税の納税猶予及び免除等

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  • (1) 農業相続人が、農業を営んでいた被相続人から相続又は遺贈により農地及び採草放牧地並びに準農地を取得し、その者の農業の用に供していく場合にはその農地等で相続税の期限内申告書に特例の適用を受ける旨を記載したもの(この農地等を「特例農地等」という。なお、準農地については農地及び採草放牧地とともに特例の適用を受けるものに限る。)の価額のうち、農業投資価格を超える部分に対応する相続税については、期限内申告及び担保の提供を条件として、納税の猶予を受けることができる(措法70の6①)。
     なお、
    • ① 平成4年1月1日以後の相続から特定市街化区域農地等
    • ② 平成17年4月1日以後の相続から一定の遊休農地

     は、この特例の適用対象から除かれている(措法70の4①カッコ書)。
     上記①の特定市街化区域農地等とは、市街化区域内に所在する農地又は採草放牧地で、平成3年1月1日において次に掲げる区域内に所在するもの(都市営農農地等を除く。)をいう(措法70の4②三)。
    • (イ) 東京都23区の区域
    • (ロ) 首都圏、近畿圏及び中部圏内にある政令指定都市の区域
    • (ハ) (ロ)の市以外の市でその区域の全部又は一部が次に掲げる区域内にあるものの区域
      • イ 首都圏整備法に規定する既成市街地又は近郊整備地帯
      • ロ 近畿圏整備法に規定する既成都市区域又は近郊整備区域
      • ハ 中部圏開発整備法に規定する都市整備区域内にあるものの区域

     また都市営農農地等とは、生産緑地地区内、田園住居地域内又は地区計画農地保全条例による制限を受ける区域内にある農地又は採草遊牧地(市街化区域内に所在するものに限る。)で、平成3年1月1日において、上記(イ)~(ハ)の区域内に所在するものをいう(措法70の4②四)。
     上記②の一定の遊休農地とは、農地法第32条の規定による利用意向調査に係るもので同法第36条第1項各号に該当するものをいう(措法70の6①)。
  • (2) 特例農地等を農業相続人が次に掲げる日のいずれか早い日まで(平成4年1月1日以後の相続において、特例農地等のうちに都市営農農地等を有する農業相続人は、③を除く。)農業の用に供してきた場合には、そのいずれか早い日において納税猶予されてきた相続税(③については、市街化区域内農地(都市営農農地等及び生産緑地を除く。)に係る部分に限る。)が免除される(措法70の6○39)。
    • ① 農業相続人の死亡の日
    • ② 特例農地等を農業後継者に生前一括贈与する日
    • ③ 相続税の申告期限から20年を経過する日
  • (3)(イ) 上記(2)の日の到来前において次の事実が生じたときは、猶予税額の全部を納付しなければならない。
    • ① 特例農地等に係る農業経営を廃止した場合(措法70の6①二)
    • ② 任意譲渡等をした面積の合計が、特例農地等の面積の20%超となる場合(措法70の6①一) (注) 収用交換等による譲渡又は農用地区域内にある農地の農業経営基盤強化促進法の規定による農地売買等事業若しくは農用地利用集積計画による譲渡等は、20%の判定の対象とならない。
    • ③ 3年ごとの納税猶予継続届出書が提出されなかった場合(措法70の6○35)
    • ④ 担保変更命令に応じなかった場合(措法70の6○36)

     (ロ) また、上記(2)の日の到来前において、次の事実が生じたときは、その事実に見合う猶予税額を納付しなければならない(措法70の6⑦⑧)。
    •  ① 特例農地等の面積の20%以下を任意譲渡等した場合
    •  ② 特例農地等につき収用等その他特定の譲渡等をした場合
    •  ③ 申告期限から10年間未開発の準農地がある場合
    •  ④ 都市営農農地等である特例農地等について、買取りの申出又は生産緑地指定の解除があった場合
    •  ⑤ 特例農地等が都市計画の決定若しくは変更又は失効により特定市街化区域農地等に該当することとなった場合等

     なお、(イ)又は(ロ)により猶予税額を納付する場合には申告期限からの利子税(年3.6%(市街化区域内農地等に係るものは年6.6%)をあわせて納付しなければならない(措法70の6○40)。
    (注) 利子税等の割合の特例(措法93)の適用がある場合には、その適用後の割合の利子税とされる。
  • (4) 後述する贈与税の納税猶予で「受贈農地を使用貸借により経営移譲した場合の特例」を受けている受贈者の贈与者が死亡した場合にもその受贈者は農業相続人として、推定相続人に貸し付けている農地等につき相続税の納税猶予が認められる。ただし、その推定相続人が、使用貸借権の譲渡・農業経営の廃止をした場合には、農業相続人がこれをしたものとみなされ、農業相続人の推定相続人でなくなった場合には農業相続人が農業経営の廃止をしたものとみなされる(措法70の6①⑨、措令40の7②二)。農業相続人の推定相続人が死亡したときは、さらに他の推定相続人等に経営移譲するか、又は、その農業相続人が再び農業経営を開始すれば、その納税猶予は継続される(措令40の7⑲二、三)。
  • (5) 農業相続人が、障害、疾病その他の事由によりその適用を受ける特例農地等について、その農業相続人の農業の用に供することが困難な状態となった場合において、その特例農地等について地上権、永小作権、使用貸借による権利又は賃借権の設定に基づき一定の貸付け(以下「営農困難時貸付け」という。)を行ったときは、営農困難貸付けを行った日から2か月以内に、営農困難時貸付けを行っている旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出したときに限り、納税猶予が継続される(措法70の6○28)。

備考

農業を営む者が、後継者に農地等の生前一括贈与をしている場合において贈与者の死亡によりその後継者(受贈者)がその農地等を相続により取得したとみなされるときも、その農地等に対する相続税の納税猶予が受けられる(措法70の5)。

農業投資価格とは、特例農地等の所在する地域において恒久的に耕作又は養畜の用に供される農地等として取引される場合に通常成立する価格として所轄国税局長が決定した価格をいう(措法70の6②一)。

準農地とは、農振地域の農用地区域内の農地及び採草放牧地以外の土地で、農業上の用途区分が農地又は採草放牧地とされているもののうち、農業相続人が開発して農業の用に供することが適当なものをいう(措令40の7④)。

農業相続人は、相続税の申告期限までに農業経営を開始し、かつ、引き続き行わなければならない(措令40の7②)。

左の特定市街化区域農地等が所在する市(特定市)には、三大都市圏の185市が該当する。

特例農地等を農業経営基盤強化促進法に規定する農用地利用集積計画の定めるところによる賃借権等の設定に基づき貸し付けた場合において、その貸し付けた農地等に代わるものとして農地等を農用地利用集積計画の定めるところによる賃借権等の設定に基づき借り受けており、かつ、その借り受けている農地等の面積のその貸し付けた農地等の面積に対する割合が100分の80以上であることなど一定の要件を満たすときは、その貸し付けた農地等に係る賃借権等の設定はなかったものとみなされる(措法70の6⑩)。

特例農地等の譲渡代金で、税務署長の承認を受けて農地又は採草放牧地を取得し、農業の用に供する場合には、その買換え部分は、左の(3)の(イ)、(ロ)とも適用されない(措法70の6⑲)。

特例農地等の譲渡代金に相当する価額の特例農地等以外の自己所有農地を、税務署長の承認を受けて譲渡した特例農地等に代わるものとして農業の用に供する場合には、その付替え部分は、左の(3)の(イ)、(ロ)とも適用されない(措法70の6⑳)。

左の買取りの申出があった場合又は特定市街化区域農地等に該当することとなった場合であっても、税務署長の承認を受けて一定期間内に特例農地等を買い換えた場合や都市営農農地等に該当することとなった場合には、左の(3)の(ロ)の④、⑤は適用されない(措法70の6○21)。

特例農地等を後継者に生前一括贈与した場合において、贈与しなかった採草放牧地又は準農地の部分があるときは、その贈与しなかった採草放牧地及び準農地の部分に対応する猶予税額は、利子税とあわせて納付を要する(措法70の6○40五)。

「農業の用に供することが困難な状態」とは、次の場合をいう(措令40の7○55)。

  • イ 障害等級が1級の精神障害者保健福祉手帳の交付を受けていること
  • ロ 身体上の障害の程度が1級又は2級である身体障害者手帳の交付を受けていること
  • ハ 要介護状態区分が要介護5である要介護認定を受けていること
  • ニ 上記イ~ハのほか、農業に従事させることを不可能にさせる一定の故障を有するに至ったことについて市町村長又は特別区の区長の認定を受けていること

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