税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

配偶者に対する相続税額の軽減

この解説は最終更新日から1年以上経過しており、現行法令に準拠していない可能性があります。

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 相続又は遺贈により財産を取得した者が被相続人の配偶者である場合には、次の①の金額から②の金額を控除した残額をもってその配偶者の相続税額とし、その残額がない場合には、その配偶者の相続税額はないものとする(法19の2①)。

  • ① その配偶者について通常の方法により計算した相続税額
     {相続税の総額×(配偶者の課税価格/相続人及び受遺者の全員の課税価格の合計額)}-贈与税額控除
  • ② その相続又は遺贈により財産を取得した全ての者の相続税の総額に、次の(イ)又は(ロ)の金額のうちいずれか少ない金額がその相続又は遺贈により財産を取得した全ての者の相続税の課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額
    • (イ) その相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額に当該配偶者の法定相続分(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続分)を乗じて得た金額(その金額より1億6,000万円の方が大きい場合には1億6,000万円)
    • (ロ) その相続又は遺贈により財産を実際に分割して取得した配偶者の相続税の課税価格に相当する金額

 なお、上記の(ロ)の課税価格は、原則として申告期限内に分割(一部分割も含む。)等により実際に取得した財産を基として計算する。ただし、申告期限から3年以内に分割された財産も特例の対象とされる。また、その3年経過日において相続又は遺贈に関し訴えの提起がされている等、次の○イから○ホに掲げるやむを得ない事情がある場合は、次に掲げる分割ができることとなった日の翌日から4月以内に分割すればその分割により取得した財産も同様に特例の対象とされる(法19の2②、令4の2①)。

  • ○イ 相続又は遺贈に関する訴えの提起がされている場合――判決の確定、訴えの取下げ等の日
  • ○ロ 相続又は遺贈に関する和解・調停又は審判の申立てがされている場合――和解・調停の成立、審判の確定、申立ての取下げ等の日
  • ○ハ 遺産の分割が禁止されている場合――その分割が禁止されている期間が経過した日
  • ○ニ 相続の承認又は放棄の期間が伸長されている場合――その伸長されている期間が経過した日
  • ○ホ その他税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合――その事情の消滅の日

 また、相続又遺贈により財産を取得した者が、隠ぺい仮装行為に基づき、相続税の申告書を提出しており、又はこれを提出していなかった場合において、その相続税についての調査があったことによりその相続税について更正又は決定があるべきことを予知して期限後申告書又は修正申告書を提出するときは、

  • ① 相続税の総額は、配偶者が行った隠ぺい仮装行為に係るものを含めずに計算し、
  • ② 課税価格の合計額には、配偶者が行った隠ぺい仮装行為に係る金額を含まないものとされ、
  • ③ 配偶者の課税価格には、配偶者が取得した隠ぺい仮装行為に係る金額を含まないものとされる。(法19の2⑤)。

備考

配偶者に対する相続税額の控除を受けることができる配偶者は、婚姻の届出をした者に限られるから、いわゆる内縁関係にある者は含まれない(基通19の2-2)。

この軽減措置は、相続税の申告書(期限後申告書及び修正申告書を含む。)又は更正請求書を提出し、かつ、その申告書又は更正請求書に必要な事項の記載と一定の書類の添付がある場合に限り適用される(法19の2③)。申告書に添付すべき書類は、戸籍の謄本、遺産分割協議書や遺言書の写し等である(規1の6③)。

上記の要件を欠くことについてやむを得ない事情があると税務署長が認める場合には、所要の書類を提出すれば特例が適用される(法19の2④)。

申告期限から3年経過日において財産の分割ができない左の○イから○ホの事情があることにより税務署長の承認を受けようとするときは、その3年を経過する日から2月以内に、その事情等を記載した申請書にその事実を証する書類を添付して、納税地の所轄税務署長に提出をしなければならない(令4の2②)。

期限内には未分割で申告しているので、期限後に分割された財産について配偶者軽減を受けることにより相続税額が異なる場合には修正申告又は更正の請求を行う(法3132一、七)。

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