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[全文公開] さあ始めよう! 初歩からの法人税 第1回 法人税とは・課税所得とは

OAG税理士法人  

【法人紹介】
 OAG税理士法人は、平成19年に設立(創業は昭和63年5月)した総勢170名超の税理士法人です。法人・個人を問わず、あらゆる税務のご要望にお応えすべく、各分野の専門チームを組織し、日々クライアントへの税務サービスを提供しております。
 法人に関する税務としては、上場企業に対する申告書作成支援・連結納税・IPO支援・事業承継対策などを得意としております。
 個人についても所得税・相続税申告はもとより、年間800件を超える相続税申告から得たノウハウを生かした富裕層に対する相続税対策なども得意としております。
 機会があれば、是非読者の皆様にもお目にかかりたく楽しみにしております。
(2019年4月現在)

はじめに

これから30回程度にわたって、法人税の主要項目を「ざっくり」学べるように、図解や事例も用いながら説明していきます。ときには厳密な意味での正確性よりも、わかりやすさを重視しつつ、法人税の考え方や、実務での判断に必要な知識などの習得を目指します。

経理部に配属された新人社員や、初めて経理部に異動された方、また、経理は知っていても税務については初めて担当する社員の皆様には、ぜひ本連載をお読みいただいて、業務の一助としていただければ幸いです。

目 次

Q1 法人税とは何ですか。
Q2 当期純利益に対する課税ではなく、わざわざ「所得」を算定するのは、なぜですか。
Q3 会計上の当期純利益と法人税上の所得の違いを教えてください。
Q4 実務では法人税上の所得をどのように算出しますか。
Q5 申告と納税について、いつまでに何をしなければなりませんか。
Q6 青色申告・白色申告とは何のことでしょうか。
【キーワード解説】……… 税務調査
(ステップアップ編)… 地方法人税/連結納税制度/グループ法人税制

 法人税とは何ですか。

 法人税とは、法人の所得に対して課される税金です。

 法人とは法が作った人格です。株式会社だけでなく、合同会社や協同組合や医療法人といった、法で規定され組織された法人は、所得(法人税上の利益のことです)に対して課税されます。

 ときには、町内会などの集団であっても、法人と「みなして」一定の所得に対して課税されることもあります。

 法人税は基本的に、会社の法人税上の利益(所得)に対して税率をかけて、算出します。中小法人以外の普通法人の場合、所得の23.2%(平成30年4月以後開始事業年度に適用)が納付すべき法人税の額となります(中小法人は800万円以下の部分の所得の税率が15%に軽減されています)。

 当期純利益に対する課税ではなく、わざわざ「所得」を算定するのは、なぜですか。

 会計上と税務上は、計算の目的が異なるためです。

 会計上の当期純利益は、企業会計原則や会社計算規則などの会計上のルールに従って、会社が判断した結果算定された金額です。当期純利益を計算する目的は、株主や債権者に対し、会社の当期の業績を報告することにあります。したがって、たとえば損失等のリスクの可能性があれば、早目に計上するなどして、保守的に算定します。

 一方、法人税の元となる所得は、国の収入(税収)にかかわるため、たとえば、リスクの可能性があるだけでは損失等の計上を認めません。また、会社の当期純利益そのままに対して課税すると、たとえば保守的に判断した会社とそうでない会社では、課税の公平性が保たれないと言われています。そこで、法人税上の所得は、法人税法という法律に従って算出しなければならないのです。

 会計上の当期純利益と法人税上の所得の違いを教えてください。

 会計上の当期純利益は、「収益」から「費用」を差し引いた額です。

 一方、法人税上の所得は、「益金」から「損金」を差し引いた額です。

 Q2のとおり、両者は計算の目的が異なるため、「収益」と「益金」、「費用」と「損金」は必ずしも一致しません。

 たとえば、賞与を計上する場合、会計上は、支給対象期間に応じて賞与引当金として支給見込み額を引当てします。この場合、賞与引当金繰入としてその期間に費用計上します。一方、法人税上の処理では、この引当金繰入は計上せず、実際に賞与を支給した時点で損金処理します。

 実務では法人税上の所得をどのように算出しますか。

 「収益」と「益金」、「費用」と「損金」は、その大部分は共通していますが、Q3のとおり、一部一致しません。そこで実務では、会計上の当期純利益を起点として、「収益」と「益金」、「費用」と「損金」の不一致部分をプラス(加算)もしくはマイナス(減算)して、所得を算出しています。

【当期純利益と所得の関係】

 申告と納税について、いつまでに何をしなければなりませんか。

 事業年度終了から2か月以内に、法人税額を算定した申告書を所轄の税務署に提出し、納税も行う必要があります。事業年度は法人税を計算するための単位となる期間であり、会社の定款などで定められています。通常は1年ですが、1年を超える場合でも、1年間を事業年度として申告納税します(これを、確定申告といいます)。

 前期の納税額が20万円超であれば、中間期末から2か月以内に、前期の納税額の半額を納税(予定納税)する必要があります(これを中間申告といいます)。

 なお、確定申告書の提出期限は、会社の株主総会が事業年度終了から3か月目であること等の場合、税務署に申請することで、3か月以内とすることもできます。このとき、納税も3か月目とすると、本来の納税期限である2か月目から納税までの間に、利子に相当する利子税が課税されてしまいます。ですから、申告期限を延長した場合でも、納税期限の2か月目までに、納税額の見込み額を納付しておくのがお勧めです。

【申告期限・納期限】

 青色申告・白色申告とは何のことでしょうか。

 法人税の申告書には、青色申告と白色申告があります。

 青色申告は、会計帳簿類を適正に作成・保管することを要件として、所轄の税務署長に、青色申告したい事業年度開始の前日までに青色申告の承認申請書を提出することで、「青色」(紙で申告する場合、昔は申告書の1枚目が文字通り青色でした。現在は「青色申告」の記載で代用)で申告することが認められるという制度です。

 青色申告すると、法人税上の特典がつきます。たとえば、欠損金の繰越控除といって、当期の所得が赤字だった場合、その額(欠損金)を来期以降に繰り越して、来期以降の所得(黒字)と通算できます(大法人等は所得の50%まで)。また、税務調査(「キーワード解説」参照)において、ミスやモレ等が発見されても、税務署や国税局が、帳簿類等に基づき理由を説明することができなければ、更正(税務署からの課税処分)されません(自主的に修正申告することはできます)。

 白色申告は、青色申告書の申請をしていない場合(会計帳簿類を適正に作成等していない、または、提出期限内に提出できなかったなど)に、白色で申告することとなるものです。白色申告では、青色申告の特典は適用できず、また、税務調査により、推測で更正(推計課税)される可能性があります。

<税務調査>

税務署又は国税局が、会社の申告した内容・金額の正確性を調査するものです。

資本金が1億円以上など規模の大きな会社は、国税局の所管となり、中小規模の会社は、税務署の所管となります(なお、申告書については、国税局所管の会社であっても、所轄の税務署に提出します。)。

通常は、調査担当部署から会社(または顧問税理士)に、調査することや会社に訪問する希望日時・期間等を電話で連絡してきます。

会社では、前事業年度以前3年分(場合によっては5年分・7年分)について、会計帳簿類(会計データ)や証憑類、契約書、議事録、稟議書、さらには場合によってパソコン内のメールまで、調査されることとなります。

会社での調査のあと、検討や追加資料の依頼などがあり、税務署側の主張に対して会社が反論するなどして、修正すべき金額等を詰めていきます。

会社が申告した金額に不足額がある場合は、自主的に修正申告をするか、更正を受けることとなります。

ちなみに、更正されたことに会社が納得しなければ、税務署長あてに「再調査の請求」をしたり、国税不服審判所に「審査請求」をしたりすることとなります。

<地方法人税>

2014年から、地方税の一部を国に納税することとなったことにより新設された税制です。

法人税の申告書の書式に、地方法人税の申告書欄が含まれています。

法人税の額に税率4.4%(2019年10月1日以後開始事業年度は10.3%)をかけたものが地方法人税の税額となります。

<連結納税制度>

1社がグループ会社の株式を直接・間接に所有することで100%支配関係にある場合は、その1社の所得だけでなく、グループ会社全体を1社(1納税単位)とみなして、所得を算定し、納税することができます。たとえば、グループ内に所得が赤字会社と黒字会社があった場合、通算することで、節税できます。ただ、煩雑な手続きや、一度連結納税を選択すると、継続しなければならないなどのデメリットもあります。

<グループ法人税制>

100%支配関係にあるグループ会社間の取引の一部について、その取引がなかったものとみなす制度です。法人税には、連結納税制度を選択していなくても、グループ全体を1社とみなす考え方があるためです。なお、連結納税制度を適用するかどうかは選択できますが、グループ法人税制は、強制的に適用されます。