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[全文公開] 今週のFAQ(元/11/11)<配当所得税額はなぜ8,000億円近くも伸びたのか?>

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国税庁が公表した「平成30事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」に関する源泉所得税等の税額の状況で,“配当所得”の税額が前年(平成29事務年度)と比べて大きく数字を伸ばしています( №3577 ・8,9頁)。その理由はなぜでしょうか?

配当所得とは,株主や出資者が法人から受ける剰余金,利益の配当,剰余金の分配,投資法人からの金銭の分配又は投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託以外のもの)及び特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得をいいます(国税庁HPより)。

源泉所得税等の税額の状況をみると,配当所得の税額(30事務年度)は5兆460億円(前事務年度4兆2,625億円)となり,その差額は7,835億円,前年対比18.4%増となります。給与所得や退職所得,非居住者等所得も前年対比で税額を伸ばしていますが,配当所得ほどの伸びはありません。

要因の一つとしては,上場企業が内部留保より株主に対する配当を重視している傾向があるといえるようです。例えば,会社が税引後の利益である当期純利益のうち,どれだけを配当金の支払に向けたかを示す指標として“配当性向”があります。2018年度決算短信集計(2018年4月期~2019年3月期)によれば,金融業を含む全社の配当性向は,2017年度の29.13%に対し,2018年度は33.62%と増えています。

こうした数字の動きが,今回の配当所得税額が伸びた理由として考えられるのではないでしょうか。

(K)