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[全文公開] 単身赴任手当と消費税

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単身赴任をしている従業員等に対して支給する単身赴任手当等。実務では,この手当等の消費税の処理のミスが散見されるという。

単身赴任手当等は主に,単身赴任者に対し毎月一定額を支給するケースと,月の一定回数に限り往復交通費の実費を支給するケースに大別されるが,いずれの場合においても“消費税の仕入税額控除の対象にならない”ので注意したい。

というのも,単身赴任手当は,家族と離れて生活することに伴い生活費等の負担が大きくなることに配慮して給与等の補填として支給されるものと考えられ,所得税において給与所得として源泉徴収の対象とされているところ,消費税においても,給与等を対価とする役務の提供に対する支払いであるといえるためだ。

また,国内における出張旅費や宿泊費,日当は,その事業者が事業遂行のために必要な費用を旅行した者を通じて支出しているものといえるため,その旅行に通常必要であると認められる部分の金額は消費税の仕入税額控除の対象になるが,単身赴任者に対するいわゆる帰宅旅費は,職務の遂行に必要な旅行の費用とは認められない。

この点,単身赴任者が会議等に合わせて帰宅する旅費については,その旅行の目的や行路等からみて,これらの旅行が主として職務遂行上必要な旅行と認められ,かつ,その旅費の額が非課税とされる旅費の範囲を著しく逸脱しない限り非課税として取り扱って差し支えないこととされている( 所基通9-3 ,税務通信DB限定解説「学ぼう!経理マンのための源泉所得税入門 第4回・非課税所得と特殊な給与の取扱い(1)」)。こうした旅費については消費税の仕入税額控除の対象になる。