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[全文公開] 延払基準廃止と経過措置

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収益認識会計基準の強制適用(令和3年4月1日以後開始事業年度から)が近づいてきた。上場企業等の場合,同基準の早期適用又は強制適用により長期割賦販売等に係る延払基準の経過措置は終了するため,終了時の繰り延べていた割賦利益額の処理を確認しておきたい。

収益認識会計基準の創設により,中小含め,長期割賦販売等に係る延払基準は廃止となった(リース譲渡を除く)。ただし,平成30年4月1日前に長期割賦販売等に該当する資産の販売等を行った法人は,令和5年3月31日以前に開始する各事業年度中,従来通りの「延払基準」を適用できる(平成30年改正法附則28)。

この経過措置は,延払基準の方法による経理が要件となっており,上場企業等は,収益認識会計基準の早期適用又は強制適用のタイミングでやめることになる。経過措置の適用をやめた場合,繰り延べていた未計上収益額と未計上費用額は,その経理しなかった決算に係る事業年度の益金及び損金の額に一括して計上することになる。

ただし,「未計上収益額が未計上費用額を超える場合」には,その経理しなかった決算に係る事業年度以後の各事業年度において10年均等で益金及び損金の額に算入することとされている(同法附則28③)。この場合,会計と税務で差異が生じるため別表調整が必要だ。

ところで,この10年均等取崩しは,「未計上収益額が未計上費用額を超える場合」に必ず適用しなければならない処理ではない。10年均等取崩しには,その経理をしなかった決算に係る事業年度の確定申告書に,その適用により益金及び損金の額に算入される金額の申告の記載をすることが必要とされており(同法附則28④),原則の一括計上と10年均等取崩しは法人が任意に選択できる。