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[全文公開] 収用等の5,000万円控除と最初の買取申出

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納税者が誤りやすい制度の1つに,収用等の特別控除の特例がある。この特例は,公共事業のための収用等により土地建物等を譲渡した者が,一定の要件を満たせばその資産に係る譲渡所得の金額から最高5,000万円を控除できるというもの( 措法33の4 )。適用を受けるには,「 最初に 買取り等の申出のあった日」を起算日として,原則6か月を経過した日までに譲渡を行わなければならないが,起算日の判定が誤りやすいという。

そもそも,ダムや空港建設事業などを除く一般的な公共事業における“買取り等の申出”とは,個別交渉等の場面で,事業施行者が納税者所有の資産を特定し,その資産の対価を明示して買取り等の意思表示をした事実のこと。あくまで“最初に”この事実があった日が起算日となることから,事業施行者から最初に明示された対価の額が実際の取引額と異なっていても,「最初に買取り等の申出のあった日」となる。

例えば,6月1日に事業施行者が納税者の甲土地を特定し,7,000万円で買い取りたい旨の意思表示をしていたが,買取価格の算定の単価改定により7月1日に再度8,000万円で買い取りたい旨の意思表示をし8,000万円で契約した場合は,6月1日が「最初に買取り等の申出のあった日」となる。この起算日は事業施行者から受け取る「公共事業用資産の買取り等の申出証明書」に記されており,6か月を経過した日までに譲渡した納税者は,同申出証明書等の書類を確定申告書に添付して提出する。

なお,事業施行者は,公共事業用資産の買取り等の申出証明書の写しを「最初に買取り等の申出のあった日」の属する月の翌月10日までに,事業施行に係る営業所等の所在地の所轄税務署へ提出する必要がある。