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[全文公開] 所得金額調整控除と扶養控除

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令和2年分以後の所得税については,給与所得者に関する改正事項が集中する。基礎控除の引上げやひとり親控除の創設など「年末調整」の場面で対応を求められるものが多く,人的控除以外では所得金額調整控除が注目される。

平成30年度税制改正により給与所得控除額は一律10万円引き下げられ,給与収入850万円を超える場合の給与所得控除の上限も195万円(改正前220万円)に引き下げられた。所得金額調整控除は,23歳未満の扶養親族を有する場合等の一定の給与所得者について,総所得金額の計算上,給与収入(その額が1,000万円を超える場合は1,000万円を限度)から850万円を控除した金額の10%相当額を控除するもの( 措法41の3の3 ①⑤)。最高15万円の所得控除が可能となる。

ここで気になるのが扶養控除との違いだ。所得税法上の扶養控除は,2以上の居住者の扶養親族(合計所得金額48万円以下)に該当する場合,これらの居住者のうちいずれか一の居住者の扶養親族のみ該当するものとみなされる( 所法85 ⑤等)。一方,所得金額調整控除は,2以上の居住者のうち,いずれか一の扶養親族にのみ該当するとみなすという規定はない。給与所得控除額の引下げに伴い,子育て・介護世帯の経済的負担の軽減が主な理由だ。

例えば,いずれも給与収入850万円超の夫婦に23歳未満の扶養親族に当たる子(合計所得金額48万円以下)がいる場合は,夫婦ともに適用対象となる( 措通41の3の3-1 )。

なお,従業員等は年末調整の際に兼用様式の「所得金額調整控除申告書」を給与支払者へ提出する必要がある。