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[全文公開] 単体納税への復帰とM&A

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グループ通算制度への移行に係る経過措置(改正法附則29①②)により,現に,連結納税制度を適用している法人は,単体納税制度に復帰することも可能だが,復帰にはデメリットもあるため留意したい。

連結納税制度を適用する動機は様々だが,親法人の開始前の繰越欠損金を活用した節税メリットというケースも多い。この場合,親法人の繰越欠損金を使い切ってしまえばメリットは無くなるため,単体納税制度に戻りたいと考える企業も多いようだ。

通常,連結納税制度の適用の取りやめは極めてハードルが高いが,今回の経過措置では,令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日の前日までに税務署長に届出書を提出するだけで単体納税制度に戻ることができるため,絶好のチャンスとなる(単体納税制度に復帰できるのは,グループ通算制度に移行する令和4年4月1日以後開始事業年度から)。

ただし,単体納税制度への復帰は,一定程度,長期的な視点で検討を行う必要がある。単体納税制度に復帰すると,5年間は,グループ通算制度の採用ができなくなるからだ(改正法附則29③)。

また,5年後にグループ通算制度を開始する場合には,資産の時価評価と繰越欠損金の切り捨ての取扱いが適用される。

M&Aの観点でも留意が必要となる。この“5年縛り”は,自社がグループ通算制度を開始する場合だけに適用されるものではなく,他の通算グループに加入する場合であっても適用されるからだ。単体納税制度への復帰が,M&Aの思わぬ障害になることも考えられるため留意したい。