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[全文公開] 新型コロナの損失と繰戻し還付

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災害で損失が生じた場合,仮決算による中間申告で「災害損失欠損金の繰戻し還付制度」の適用をすれば過去に納めた法人税額の還付が受けられる。新型コロナに係るマスクや消毒液などの購入費用も適用対象だが,感染防止に要する費用が一様に対象となるわけではない。

同制度の対象となる災害損失欠損金とは,災害により棚卸資産や固定資産,一定の繰延資産について生じた“損失”の合計額から,保険金等により補てんされる額を除いたものをいう( 法令154の3 ④)。被害の拡大や発生を防止するため緊急に必要な措置を講ずるための“費用”も該当するが,これはあくまでも“棚卸資産等について被害の拡大等が見込まれる場合に支出された費用”に限られるという。

具体的には,新型コロナウイルスが付着することで,棚卸資産や固定資産などの滅失や損壊,価値の減少が生じて資産の帳簿価額を減少せざるを得ないような恐れがあるときにその被害を防止するための費用だ。例えば,生鮮食品やパンなどの販売に際し,商品の保護に用いるショーケース,ビニール製カーテン,貸衣装等の衛生管理に用いる衣装カバー,パーテーションなどの購入費用は,個々の状況を前提とするが,適用の対象となる可能性があるようだ。

ただし,業界団体等のガイドラインに沿った必要な支出であること,利用者の感染が確認された場合には廃棄処分するというルールがあること,などと各資産に係る被害拡大を防止するための支出であると客観的に示す必要があることに留意したい。

なお,『感染発生の防止のため,配備するマスク,消毒液,空気洗浄機等の購入費用』が同制度の対象となる災害損失欠損金の該当例として示されている(「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ5 問2」)。