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[全文公開] インフルエンザ予防接種と給与課税

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新型コロナウイルス感染症との同時感染への懸念から,今年はインフルエンザの予防接種を受ける者が例年に比べ増加しているようだ。インフルエンザの予防接種は,治療ではないため保険適用がなく,自治体等から補助される場合を除き,原則,接種費用の全額が自己負担となる(厚労省「令和2年度インフルエンザQ&A(令和2年11月18日時点)」問29)。

業務停滞防止や健康維持等を目的に,会社が従業員等の接種費用の一部又は全額を負担する企業も多いだろう。この場合の会社負担額は,福利厚生費として処理でき,従業員等には給与課税する必要はないという。

所得税法上,給料・賞与といった金銭の支給以外に,会社が従業員に行う経済的利益の供与も,原則,給与として課税される。

ただ,社会通念上一般的な範囲内,業務遂行上必要など一定の要件を満たすものは給与課税しないとされており,その一つが従業員の福利厚生のために支出した費用だ( 所基通36-29 )。

例えば,会社が負担する人間ドック費用が挙げられる。人間ドックは,法律で実施が義務化されていないものの,義務化されている健康診断と社会通念上一般的に同程度で実施されているものであるため,①著しく高額なものではないこと,②対象を役員など特定の者に限定せず 全社員 とし,希望者が受診できることを満たせば,福利厚生費として給与課税する必要はない(国税庁 質疑応答事例「人間ドックの費用負担」)。

インフルエンザ予防接種についても,法律上の義務ではないものの,健康診断等と社会通念上一般的に同程度で実施され受けるべきものとされているため,上記①②を満たせば福利厚生費として処理できるとのことだ。