※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

[全文公開] 較差補填金の範囲

( 62頁)

出向者に係る毎月の賃金等の較差補填については,通達で「出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填するため出向者に対して支給した給与の額は,当該出向元法人の損金の額に算入する」と示されている( 法基通9-2-47 )。その通達には注書きとして,「①出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給できないため出向元法人が支給する賞与の額」,「②出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額」という具体例が列挙されており,その対象には所定の時期に支払われる手当等もなり得るという。

そもそも通達本文は,“給与条件の較差を補填するための支給”,という書きぶりになっている。給与条件の較差とは,月々の給与だけの枠組みの差ではなく,具体例のように賞与に加えて,住宅手当や扶養手当などの各種手当も含めて比較した差であるという。つまり,毎月支給される住宅手当や家族手当等に限らず,クリスマス手当のような所定の時期のみに支給される企業独自の手当等であっても,出向元法人にだけ措置されていたり,手当の金額に差異があったりするのであれば,それらも含めたところで給与条件の較差を判断するとのことだ。

例えば,コロナ禍の企業の雇用維持策として,出向元法人の余剰人員を資本関係のない他業種へ出向させるという動きがある。出向元法人の事情により従業員を出向させる場合に,出向元法人の給与ベースが各種手当等を含んで月給40万円(各種手当等を含まない場合は35万円),出向先法人の給与ベースが月給30万円であれば,差額10万円が給与条件の較差に相当する。

なお,このとき出向者に対する給与の較差補填額については,出向元法人が出向者に直接支給した場合でも,出向先法人を経て間接的に支給した場合でも同様の扱いになる。