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[全文公開] 民泊の損失と損益通算

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今般の新型コロナウイルス感染症の影響で訪日外国人が減少したこと等により,民泊を行う者において損失が出た場合,当該損失は雑所得内に該当する他の収入に限って損益通算ができるという( 所法35 )。

そもそも,自己が居住する住宅を利用し,住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業(民泊)を行うことによる所得は,原則として雑所得に区分される(国税庁「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」)。

所得税法上,「不動産の貸付けによる所得」は不動産所得に区分されるが,民泊は一般的な不動産の賃貸とは異なる。宿泊施設の提供者には宿泊者の安全等の確保等の役務提供が義務付けられており,利用者から受領する対価には,部屋の使用料のほかに寝具等の賃貸料等が含まれている。宿泊施設として利用できる家屋の条件や宿泊日数の制限(年間180日)等も踏まえると,同情報では民泊による所得は雑所得に区分されると示されている。

雑所得に係る損失は,給与所得など他の所得区分と損益通算することができない( 所法69 )。ただ,通常の雑所得内での損益通算と同様に,民泊で生じた損失も雑所得内での損益通算が可能だ。

例えば,YouTube等のデジタルコンテンツに係る副業収入があるサラリーマンは,同様に副業として行う民泊で損失が出た場合,相殺して所得を減らすことができる。

なお,不動産賃貸業を営む者が,契約期間の満了等により賃貸契約が終了した不動産を利用して一時的に民泊を行った場合や,専ら民泊による所得で生計を立てているなど,その事業が所得税法上の事業として行われていることが明らかな場合に係る所得は,それぞれ不動産所得,事業所得に当たるため他の所得との損益通算の対象となる。