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[全文公開] 居住用賃貸建物と3年以内の転用等

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令和2年10月1日より,「居住用賃貸建物」(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物)には原則,消費税の仕入税額控除を適用できない。ただ,その取得した課税期間の初日から3年後の課税期間(第3年度の課税期間)の末日までの間(調整期間)に,居住用(賃料=非課税)から事務所等用(賃料=課税)に転用,又は居住用賃貸建物を譲渡した際は,“一定金額”を仕入控除税額に加算できる調整措置がある( 消法35の2 等)。

居住用賃貸建物を事務所等用に転用した場合,この“一定金額”は,『居住用賃貸建物に係る税額×課税賃貸割合(調整期間の事務所等用の貸付け金額の合計額/調整期間の建物の貸付け金額の合計額)』で算出される。従来からある,賃貸建物を事務所等用から居住用に転用した場合などの調整措置( 消法34 )では,その転用した課税期間の仕入控除税額を調整するが,居住用賃貸建物を事務所等用に転用した場合は,第3年度の課税期間の仕入控除税額を調整する。

例えば,居住用賃貸建物に係る税額が1,000万円,課税賃貸割合が50%の場合,第3年度の課税期間に生じた課税仕入れにつき算定した仕入控除税額に対し,500万円(1,000万円×50%)を加算した金額が第3年度の課税期間の仕入控除税額となる。

また,第3年度の課税期間の末日までに居住用賃貸建物を譲渡した場合は,その建物に係る税額に,課税譲渡等割合(譲渡までの事務所等用の貸付け金額の合計額+譲渡の額)/(譲渡までの建物の貸付け金額の合計額+譲渡の額)を乗じた金額を,譲渡した課税期間の仕入控除税額に加算する。

なお,当初から居住用賃貸建物の一部を事務所等用に賃貸する場合,事務所等用の部分(使用面積割合等で合理的に区分)に係る税額は,従来どおり取得時に仕入税額控除の対象となる( 消令50の2 等)。