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[全文公開] 上場株式等の譲渡損失の繰越控除

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2020年は世界的に大きく株価が変動した1年となった。12月には日経平均株価が約29年ぶりに2万7,000円を超えたものの,上半期のコロナショックの影響で株式等の譲渡損失が生じてしまった人もいるだろう。

通常,同一の特定口座(源泉徴収口座)内の上場株式等の譲渡所得等と配当所得等は,自動的に損益通算や源泉徴収がなされて,確定申告は不要だが( 措法37の11の6 ⑥),配当所得等を上回る多額の譲渡損失が生じてしまった場合には,確定申告により翌年以後に繰り越すことが可能だ( 措法37の12の2 ⑤等)。

繰り越せる譲渡損失の額は,損失が生じた年に申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等との損益通算後の金額となる( 措法37の12の2 ①⑤⑥)。損失が生じた年から毎年連続して確定申告することで,損失が生じた年の翌年以後3年間にわたり繰り越すことができる。注意したいのは,翌年以降に上場株式等の譲渡がない場合でも,損失を繰り越すための申告が必要となる点だ。

翌年以降,繰り越した損失金額は,順に,上場株式等に係る①譲渡所得等,②配当所得等の金額から控除する( 措令25の11の2 ⑧)。例えば,令和2年に120万円の譲渡損失があり,配当等が30万円ある場合,損益通算後の90万円を繰り越すこととなる。令和3年に譲渡益60万円,配当等40万円がある場合,まず譲渡益60万円から控除し,残りの30万円を配当等40万円から控除する。控除後の10万円が配当所得等として課税対象となる。

なお,源泉徴収口座において生じた上場株式等の譲渡損失であっても,その源泉徴収口座以外の上場株式等の譲渡所得等や配当所得等との損益通算には確定申告が必要となるため,注意が必要だ。